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ライフスタイル
シェアリングネイチャーな風が吹く村(アナンダ)(SNL2017年3月発行)
サンフランシスコから内陸部に向かって車で4時間弱
ネバタ山脈の中腹に位置するアナンダ村。
西洋のヨガの父、ヨガナンダの思い描いた自然と共生する暮らし。
野菜のおいしさ、朝日と星の美しさ...
野生動物の気配を、大地の息吹を聴いて過ごす日常。
心と身体が、ゆっくりと大地に還っていく。
メディテーションで大地に還る
アナンダ村
【シェアリングネイチャーの故郷】
西洋のヨガの父、ヨガナンダの思想に基づき、シンプルな生活を送るコミュニティ。シェアリングネイチャーの創始者、J・コーネル氏が暮らす村としても知られる。
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“Ananda”はサンスクリット語。“JOY”という意味ーーー



こうこうと輝く月に照らされ、大地に寝そべってみる。明るい夜空のなかにも時おり流れ星が走っていく。シュラフの中から月の写真を撮ろうとがんばったのに、あっという間に眠りに落ちてしまう。



いっしょにビバーグした仲間に声を掛けられて明け方目を覚ますと、目の前には遠くの山に沈みゆく赤い月。無言で月を見ていた...。日の入りのときに感じるような、寂しさや物悲しさはなかったのが、今思うと不思議に思う。



月が沈みきり、「すごかったですね」と話す間もなく、後ろが明るくなって来た。丘の反対側に行くと、山並みを境に、うすぼんやりと色づいていく空。さまざまな色がだんだんと強い白やオレンジの色へと変わっていき、太陽が顔を出した。

────アナンダ村でこの経験をした人は



真正面から日差しを浴びるという経験はさほどないことで、圧倒されるものがありました

と話します。



自分たちから後ろにまっすぐ伸びる影が印象的でした。影を邪魔する物がない、広々とした空間。その先にはこれまたまっすぐに上に伸びる木々

都市型の生活のなかでは、自分が大地に乗って木々や生きものたちと一緒にゆっくりと回転していることなど、意識することはありません。でも開けた大地に立ち、自然を受け入れているとき、まぎれもなく「自分は地球の一部なのだ」と感じることがあります。廻っているのは月でも太陽でもなく、自分自身であり、その朝の光と風を同じように受けている木々が、野生の生きものの気配がそこに確実にある場所...。それらの自然のなかで人の営みがたんたんと続くその場所。



アナンダ村は、パインとオークの森林地帯のなか、野生動物保護区にも指定されている地域にあります。西洋ではヨガの父として有名なパラマンサ・ヨガナンダの思想に基づき、東洋思想とキリスト教を融合した生き方を実践する共同体(コミュニティ)で、現在300名弱の村人が暮らしています。ヨガナンダは、アメリカではアップルの創始者の故スティーブ・ジョブスが、唯一自分のiPadにダウンロードした本『あるヨギの自叙伝』の著者として知られています。



村の名前「アナンダ」とはサンスクリット語で「喜び(JOY)」を表す言葉。イタリアのアッシジをはじめ、同じ主旨のコミュニティが世界各地にあるといいます。なかでもここ、カリフォルニアのアナンダ村は、シェアリングネイチャーとは切っても切れない場所です。じつは、シェアリングネイチャーの創始者ジョセフ・コーネル氏が暮らす村。ネイチャーゲームはこの自然から、この環境から、世界に発信されているのです。

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「瞑想」はクールアップ

800エーカーの森林と草原。

訪れるひとびとをシェアリングネイチャーの風がつつむ



アナンダ村の暮らしで、特徴的なものの一つが「メディテーション(瞑想)」です。多くの村人は自分の家にメディテーションルームをつくり、朝食前と日暮れのあとに瞑想をします。この夜明けと夕暮れの時間帯は、太陽が私たちの身体に対して垂直に当たるときで、自然のなかに静けさがあり、瞑想に適しているのだといいます。



それはちょうど、大地の上で太陽と月の巡りを感じた時間。アナンダ村の人びとは、大地とともに在る感覚をそうして日々刻んでいるのかもしれません。



ただし、アナンダ村は閉鎖されたコミュニティでは決してなく、多くの村人が周辺の街に仕事に通い、周辺地域からはアナンダの幼稚園や学校に通ってきます。



「日本では『瞑想』と聞くと、正直ちょっと...と思っていたんです」というビジターが、「ここでは自然に座り、その静粛な時間を楽しめる」という人も少なくありません。

ビジターのひとりは



瞑想は『クールダウン』ではなく『クールアップ』だという言葉がとても印象的でした。自分を研ぎすませていくこと...ネイチャーゲームに通じるものを感じました

といいます。なかには、アナンダ村を訪ねて以来、日本でも10年間毎日瞑想の時間をもっている...という人も。



「瞑想」とは「無になるための時間」と思いがちですが、コーネル氏に聞くと、それは少し違うようです。



瞑想をすることによって、人は〝自分の領域〟が身体を超えて周囲に広がります。意識の拡張ともいいます。そのため、アナンダ村の人たちは、あたかも自分の身体の一部であるかのように、周囲の自然を愛しているのです

とは、コーネル氏。そして、こうもいいます。



伝統的な修道院では、自我をなくすために願望を捨てる努力をします。けれど、アナンダ村の考え方は、単に願望を消すことにはこだわりません。瞑想をしているとしだいに意識が高まり『世の中に出て行って、こんなことやあんなことをしたい』という、個人の欲望とは異なる思いがわき出てきます。それこそが自分の本質だと考えています

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内的な成長を支える「学校教育」

「瞑想」は、アナンダ村では幼稚園や小学校でも行われます。それは大人の瞑想とはちょっと違い、まるでネイチャーゲームの第三段階(クマ)の活動のようです。手の動きと組み合わせた呼吸を意識させる活動をしたり、サイレントウォークに出掛けたり、自然のなかで仰向けになって動かぬ「石になる」という活動もあります。



その表情はとても無邪気で、宗教的な規律を感じることはありません。幼稚園から小学校2年生までを担当する教師は



この年代の子どもたちは、より穏やかで敏感で、静かでいるという、ごく基礎的な能力を身につける必要があります

といいます。それは、感性を開き、磨くための訓練なのかもしれません。



この「瞑想」を含む学校教育は、アナンダ村の大きな特徴の一つです。アナンダ村の教育は、「身体(body)を使った経験によって、感情(feeling)が動き、意志(will)を生む」流れを大切に、『バランスのとれた教育』を目指しています。



小学校で教鞭をとるメラニー先生は、人には4つの側面があるといいます。それは「身体」「感情」「意思」「知性」。この4つを持っている人は「バランスのとれた状態」であり、子どもたちは充実した人生を送るためにこれらを学校で学び、教師はそれを支えるのだと話します。



たとえば、虫についてたくさんの知識があるのに、虫を針でつつく子どもがいたとします。これは、知性と他の3つの側面とのバランスが悪い状態ですね

具体的に子どもたちが学校で学ぶのは、他人と協力する方法、意志の力を鍛える方法、共感する力、そして他者への思いやり。情報伝達をメインにした教育はアナンダ村では行われていません。



私たちの教育では、たとえば戦争を起こす国について考えます。彼らは、権力によって人は幸せになると考えたのか。それにより安全や幸福がもたらされたのか。そのようなことを考えるなかで、自分は権力をほしがっているのか、他人を傷つけてはいないか...などを考えさせます。子どもたちが勉強をするときには、なぜ物事が悪くなったのか、なぜ良くなったのかを学ばせることが大切です。そのためには情報だけではなく、授業のなかで内面的な成長を促す場の提供もしなければいけません



鳥の声を識別できるようにするためには、多様な鳥の声をコンピューターで再生すればいいかもしれません。しかし、あえて子どもたちに鳥の声、鳥の姿を探させることで学ばせるという方法を用いることで、我慢強さを学ばせることができる。そこに内的な成長を促す学びがあるといいます。

「JOY」が身体から沸き上がる

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コーネルさんの直接指導を体験できるのも「アナンダツアー」ぼ楽しみのひとつ。

通訳つきで、シェアリングネイチャーを深く体験できる。



乾燥した大地、草原、背の高い針葉樹の森...。強い日差しと草の匂いを運ぶ乾いた風。シエラネバダ山脈の麓にあるアナンダ村は、湿潤な日本の自然とはかけ離れた環境をもちます。シカやリス、ターキーが草原をゆうゆうと歩き、朝はにぎやかな鳥の鳴き声で目が覚める。人間を怖がらない動物たちとの距離はとても近く、村人たちは自然に彼らと接しています。その暮らしはとてもシンプルで、質素。自然に配慮をしたその暮らしは、とても心地よく感じられます。



村では、メディテーションの他、ヨガも日常的に行われており、これらのセミナーを受けるために年間を通して世界中から多くの人が訪れます。



800エーカーの森林と草原をもつ村で提供される、メディテーションとヨガ、してベジタリアンの食生活。身体に入るすべてのものがやさしい自然そのもののように感じられる時間...。



長年アナンダ村に通っていた協会のスタッフは



アナンダで自然や生きもの、村の人びとの暮らしにのんびりと接していると、いつも頭のなかに「JOY」という言葉が浮かぶ

といいます。そして、『シェアリングネイチャーの6原則』にある「深いよろこびを体験しよう」の原点に触れたような気がすると...。そして、



自然のなかでの喜びに満ちた経験が大事



身近な毎日の暮らしのなかでも、見方次第でその感覚が得られる

ということが心に落ち、また



本当に必要な情報は自分の内にあり、実体験のなかで自分で気づいていくものだといわれた気がする

とも。



アナンダ村の自然と、人と、しっかりと向き合ったとき、それらは訪れるものに多くのことを語ってくれるのかもしれません。掛け替えがのない体験とともに。


情報誌「シェアリングネイチャーライフ」Vol.16 特集(デザイン:花平和子 編集:伊東久枝、佐々木香織、水信亜衣 イラスト:矢原由布子)をウェブ用に再構成しました。
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