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ライフスタイル
「緑の医学」...アロマテラピーとハーブの力(SNL2015年3月発行)
欧米から日本に入ってきた
アロマテラピーやハーブ療法。
日常的に使っている人も
年々多くなっているようです。
けれど、日本ではまだ医療としての認識は低く
健康的なライフスタイルの彩りと捉えている方も
少なくない。
ーーーと嘆くのは、グリーンフラスコ代表の林真一郎さん。そこで、"医療としての可能性" を伺ってきました。
植物で癒す
予防医療推進人
【薬剤師】
林 真一郎(はやし・しんいちろう)さん

東邦大学薬学部卒。調剤薬局勤務を経て、1985年に植物療法普及のためにグリーンフラスコ株式会社を設立。現在東邦大学などで講師も務めている
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最近ぐっすり眠れない...、花粉症が気になる...、元気が出ない...。病院に行って薬をもらうほどでもないし、薬を常用するのも嫌だし...。そんなときに、ハーブティーやエッセンシャルオイル(*注1)を使ってみたことはありませんか。



ハーブは薬の生みの親。母親のようなものです。もっと医療として活用されるべきだと思います

と話すのは林真一郎さん。ハーブティーやアロマテラピーに使われるエッセンシャルオイルの販売、ハーブ療法等を行うグリーンフラスコの代表を務める一方、薬剤師・臨床検査技師の免許を持ち、大学の薬学部で教鞭もとる薬学の専門家です。



現在、ハーブやアロマテラピーというと若い女性のものという印象が強くなっています。しかし、ハーブは料理の香り付けや保存料、薬などに使われる植物全般のこと。じつは馴染みのあるシソやミツバなども和のハーブといえるのです。



このようにハーブやアロマテラピーは誰もが気軽に入手して使えるものだけに、医療という意識が低くなりがちです。けれど、同じ生薬でも東洋版の「漢方薬」が、医薬品として確固たる地位を得ていることを思えば、ハーブなどに対する見方が少し変わるのではないでしょうか。



風邪をひいたときに薬局などで購入するアスピリン(解熱鎮痛剤)は、ヤナギから抽出した成分をもとに作られたものです。他にも医薬品の原料には、ジギタリス、コカ、アルファルファなど、一般的に知られる植物も多くあります。じつは、抗がん剤のタキソールやビンクリスチンをはじめ、現在処方されている薬の約2分の1が、植物天然成分由来のものなんです

そういう目で見れば、もっと医療現場の人も関心を持てるはず、と林さん。



現在日本では、産婦人科や精神科、心療内科の一部で用いられているものの、他の分野では植物療法はほとんど関心を持たれていないのが実情。けれど、イギリスではハーブ医学校があり、ドイツではメディカルハーブ(医療に使われるもの)サプリメントの多くが、医療品として扱われています。



一般的な病院で行われている現代西洋医学は、重い病気やけがのときにはとても有用です。けれど、薬には副作用の危険があるのも事実。生活習慣病の予防や慢性疾患の治療、つまり "日常的に使うもの" は、免疫力や自然治癒力を高める植物療法や自然療法、『緑の医学』が適しているとぼくは思うんです

現代西洋医学と『緑の医学』、どちらがいいというのではなく、双方が補填し合い健康を維持するのがいい。薬剤師として勤務をしていた時代、「ハーブティーが飲める薬局を開きたい」という夢を持っていた林さんらしいスタンスです。


*注1:植物の芳香成分を抽出した揮発性のオイル

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無駄なものの効能

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ハーブが注目されるようになり、最近では有効成分の研究なども盛んに行われています。しかしそれも「行き過ぎると危険だ」という、林さん。効果を追求し、単一成分にまで精製するような方向に進めば、結局は「薬」になってしまうと、警笛を鳴らします。



リンゴやジャガイモの成分にアンチエイジング効果があるといわれますが、その99%は皮と実の間にあるんです。それらは今までゴミとして捨てられ、微量分として切り捨てられていたものです。『緑の医学』は、人知では計りしれない無駄とされるものも含めて丸ごと扱うものだからこそ、意味があるんですよね

近年注目を集めているものに『ホリスティック医学』があります。ホリスティックとは、「全体、包括的」という意味。現代西洋医学では、多くの場合心と身体を分けて診ます。しかし本来、心と身体は不可分のもの。そこで、心・身体・精神性・生活環境までを含め、統合的な観点から病気を捉え、治療を行っていこうというのが『ホリスティック医学』です。そして、『緑の医学』はこの主要な担い手になれると、林さんは考えています。



鎮痛剤を飲めば身体の痛みは取り除けるかもしれません。でも病気になったことによる心の痛みは消えません



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使用上の注意

1.エッセンシャルオイルは飲用しません。

2.医薬品を使用している場合は、医師や薬剤師に相談してから行いましょう。

認知症やがん治療でもアロマテラピーの効果

近年増えている生活習慣病といわれる高血圧・糖尿病・心臓疾患など。そして社会的ストレスが原因で急増している鬱病やパニック障害などの精神疾患。高齢化とともに社会問題となっている認知症。



現代西洋医学の進歩により多くの病気を人間が克服できるようになった一方、慢性病を抱えて生活をする人、介護を受けて暮らす人、緩和ケアを受けながら終末期を過ごす人など、病気とともに人生を送る人が増えています。



健康保険制度の壁があり、現代西洋医学と植物療法などを同時に行うことが難しいなどの事情はありますが、これからは、『緑の医学』がもっと広い分野で活用されるべきだと思います

と林さん。



その著書『植物力をくらしに活かす緑の医学』から、すでに実証された、各種ハーブやエッセンシャルオイルのもつ「科学的効果」を要約してご紹介します。



●自律神経や免疫系などの調整

抗菌作用の他、自律神経やホルモンの調整作用、免疫能力を高める働きなどを持つものがあります。これらは感染症や生活習慣病の予防から心の癒しまで、広い範囲の効果が期待でき、実際に世界各地の医療現場で導入されています。



●生体リズムの調整機能

ある種のハーブに含まれるメラトニンは、内服すると体内のメラトニンレベルを上昇させる効果をもち、生体リズムを調整、抑うつを解消します。



●美容効果

抗酸化作用や解毒作用によって、美肌やアンチエイジング効果が期待できます。

最近では、ガン細胞の活動を抑える効果をもつエッセンシャルオイルが注目を集めたり、認知症研究の第一人者が「アロマテラピーは効果がある」と述べるなど、現代西洋医学の分野でも再認識される植物療法。認知症の初期症状にみられる嗅覚の衰えに対し、アロマテラピーで刺激を与えることで病気の進行を抑えることができる...という発表は、認知症と診断された人びとに多くの希望を与えています。



ただし、『緑の医学』は夢の特効薬ではありません。かといってファッションでもない。その中間。ぼくは、自然を重んじる態度と科学的な思考のバランス感覚、両方を兼ね備えていることが大切だと思うんです。医と食が切り離されて考えられる西洋とは違い、日本には "医食同源" の考え方が暮らしの基本にあります。『緑の医学』を受け入れる素地はあるんです

と林さんはいいます。

アロマがいくらよくても自然に勝るものはない
日本には世界に誇る保険制度があり、誰もが一定水準の医療を受けることができます。それは素晴らしいことなんですが、そのため日本人は予防医学への関心が欧米に比べ非常に低い。これは問題です。人生を豊かに暮らすためには、健康は自分で守るという意識が大切だと思うんですよ

とは林さん。



高齢者や精神疾患を持つ方などは、自律神経の働きに不具合が出やすく、「夜眠れない」と訴えるケースが増えます。これは、本来昼に活発になる交感神経と、夜に優勢になる副交感神経のバランスが崩れていることによる症状。そのようなときは、ハーブやエッセンシャルオイルなどによる自然の刺激で体のリズムを正常に近づけることで、健康を取りもどすことができます。また、家族の介護を担う人に掛かる心身の負担の軽減にも、『緑の医学』は有効だと林さんはいいます。



『緑の医学』には "つながりを取り戻す力" があります。心と身体、人と人の関係も。以前、終末期を迎えた父親に疎遠になっていた娘さんが毎日アロママッサージをして、親子関係を取り戻せたという話をしてくれた方がいます

これこそ『緑の医学』の利点です。



『森は自然のホスピタル』という言葉がありますよね。本来は、人は自然のなかにいて、本物の自然に触れているのがいいのだと思います。香りだけではなく、視覚や聴覚など、五感六感すべてによい刺激が得られますから。でも現代生活ではそれができない人が多い。だから、ハーブやエッセンシャルオイルなど、自然の一部を切り取ったものを生活に取り入れて、本来のバランスを取り戻す

ハーブやアロマテラピーを愛する人たちには、ぜひ本物の森へ、自然に足を運んでほしいと話す林さん。



植物療法の新たな一面を認識した、林さんとの時間でした。

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情報誌「シェアリングネイチャーライフ」Vol.13 特集(デザイン:花平和子 編集:伊東久枝、佐々木香織 イラスト:井上みさお(P.8〜9)・初澤久実(P.10))をウェブ用に再構成しました。
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