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ジョセフ・コーネル来日講演会〜心と身体のウェルネス(健康)を ネイチャーゲームで。
2011年に来日したジョセフ・コーネル氏の講演会より、シェアリングネイチャーウェルネスの効果についてご紹介します。
被災した日本の人びとのためにできること

※本記事は情報誌「ネイチャーゲームの森 vol.75」(2011年9月15日発行)特集より転載しています。
団体名称、役職者名等について発行時の表記となっている場合があります。



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去る6月、愛知県岡崎市で開催された『ネイチャーゲーム25周年記念 全国ネイチャーゲーム研究大会』出席のために、ネイチャーゲームの創始者であり『Sharing Nature with Children』(邦訳版『ネイチャーゲーム1』柏書房発行)の著者であるジョセフ・コーネル氏が来日しました。


今号では、東日本大震災後はじめての来日に、コーネル氏が「被災した日本の人びとに伝えたい」という「シェアリングネイチャーの活動がつくるウェルネス(健康)の効果」について、研究大会の基調講演と東京で開かれた会員のつどいで話された内容の一部を抜粋してご紹介します。

シェアリングネイチャー・ウェルネス・プログラム

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このたびの地震と津波、その後の放射能汚染など、今日本のみなさんは多大なるストレスと不安に打ちのめされていることと思います。私は今回日本に来るにあたり、日本の人たちに「シェアリングネイチャー・ウェルネス・プログラム」という新たな考え方を紹介しようと思いました。

これは今まで行ってきたことを新たにするわけではなく、以前から言ってきたことなのですが、あえてそれを前面に出すことによってシェアリングネイチャーの目的をはっきりさせようと思います。それはウェルネス(健康)、リアリティ、喜び、といった観念です。


私が『Sharing Nature with Children』(邦訳版『ネイチャーゲーム1』)を書いたのは、もちろん自然を助けたいと思ったからですが、それだけではなく、そこには人びとを助けたいという気持ちがありました。

大学を卒業して間もないころ、シェラネバダ山脈に子どもたちをハイキングに連れて行ったことがあります。

その参加者の中に動物や植物の名前だけでなく、自然のことをとてもよく知っている11~12歳ぐらいの男の子がいました。

彼はもしかしたら私よりも自然についての知識があったかもしれません。しかし彼は平気で虫の羽をむしったり、拾った枝を木に突き刺したりするのです。



彼を見て私は、



知識というものはそれほど重要ではなく、それよりも何を思い、何を感じるかの方が、自然のなかでは重要だ

と気がついたのです。この少年に会った2.3年後に、私は最初の本を書き始めました。



みなさんは田中正造(足尾銅山鉱毒事件を告発した明治時代の日本の政治家)という人を知っているでしょうか? 

実は、シェアリングネイチャーのモットーというべき言葉を、彼が言っています。それは

治水は川の問題ではなく、人の心の問題である

という言葉です。私も、人びとがもっと自然や自分の周りの環境に繊細になれば、自然が守られるだけでなく、人びとの体や心ももっと健康になれるのではないかと思います。


今回考案した「シェアリングネイチャー・ウェルネス・プログラム」には4つの効果があります。(具体的なプログラムは5ページをご覧ください)


それぞれの効果を裏付けるいくつかの事例とともにご紹介しましょう。

1.五感を使って、今この瞬間を充分に意識できるようになる

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セントルイスで、カトリック協会の神父さんたちを対象に2時間ほどネイチャーゲームを行った友人がいます。

神父さんたちは職業柄ストレスを抱えることが多いこともあり、酒や薬物などの依存症を抱える方もいました。プログラム開始前、多くの神父たちは鬱的で、独断的なものの見方をしていたといいます。

しかし、活動をするうちに神父たちの顔が変わり、まるで子どものように目を輝かせ始めました。そして神父のひとりがこのように言ったそうです。

今まで私はこんなに五感をフル回転させたことはない。急に世界が輝きだし、生きている!と感じた。私はいつのまにか微笑み、最後には笑い出していた

と。

2.自然の静けさによって、心の平安を見いだす

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これは私が2~3年前に義母の友人とランチをしたときの話です。

彼女は『ネイチャーゲーム3』を読み、その時間を楽しんでいました。その彼女が「私は病気で、間もなく死が訪れます」と打ち明けたのです。

しかし



迫り来る死に対して恐れを抱いてはいません。なぜなら、このシェアリングネイチャーの活動を通して自然に触れ、永遠というものの一部に触れた気がしたからです

といいました。


シェアリングネイチャーは、活動を通して、理論を通して、人びとの心をより高い境地へと導き、このように病気の人を助けることもできるのです。

3.人生を肯定的に見られるようになる

すでにお聞きになった方も多いと思いますが、私がよくする話のひとつに「二匹の旅をする犬」の話があります。"縄張り意識が強く疑り深い犬"と、"いつも微笑んでいる犬"の話です。

あるとき、ドアが開いていた家に疑り深い犬がしかめ面をして入り、唸り出しました。そして、慌てて家から飛び出すと一目散に逃げていきました。

その後、微笑んでいる犬が楽しそうにその家に入り、しばらく過ごして幸せそうに出て行きました。なぜ、二匹の犬は違う対応をしたのでしょうか・・・。

その原因はその家のメインルームにあった100枚の鏡です。つまり、疑り深い犬は100匹の敵を見、友好的な犬は100匹の友だちを見たのです。


仏教の開祖であるブッタは「私たちの未来は自分が思い描く通りになる」といっています。これは人生とは、その人が人生をどう捉えるかによって変わってくるということです。もし、問題だけを見つめるなら問題しか見えません。

しかし、肯定的な考え方をすれば、可能性を見出すことができ、エネルギーが満ち、人生を前向きに捉えることができます。ですからネイチャーゲームの活動や理論は、前向きになるようにつくられているのです。

4.他者との心のつながりを築く

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1999年に台湾で起きた大地震の直後に、被災地の子どもを対象に行われた、シェアリングネイチャー・プログラムがあります。当時子どもたちは地震によって家や生活すべてを失い、学校も閉鎖され、行き場をなくしていました。

ところが活動に参加したことで、彼らは「ひとりぼっちではない」ことを知りました。そこにコミュニティが存在し、自分の居場所がある、信頼できる世界が、人が、失われてはいないことに気づきました。"生きることのすばらしさ"を彼らは悟ることができたのです。

「自然から学ぶ喜びを人びとに伝える」ということ

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このように、シェアリングネイチャーは大人にも子どもにも、どんな人にも行うことができます。そして、自然と深く関わることで、「センス・オブ・ジョイ=喜びの感覚」を味わってもらうことができます。命そのもの、生活そのものの喜びに触れることができるのです。それはたとえ短い時間だとしても、心配事や問題から完全に離れることができる時間です。


「シェアリングネイチャーの活動で、どんな問題も解決できる」と考えるのは愚かでしょう。けれど私たちはこの活動を通して、苦境にある人びとを助けることはできます。

苦難に直面している人は不安や心配に捕われ、そのことでエネルギーを失っていきます。すると、問題を解決するエネルギーさえ失ってしまいます。

ところが、自然と深く関わり、〝今このとき.に集中すると、未来の心配事や過去の後悔への捕われから解放され、世界をもっと違う目で見ることができるようになるのではないでしょうか。

そうすれば、世界は自分が思っていたよりもっと大きなものであることに気がつくに違いありません。



シェアリングネイチャーのプログラムは、ただの自然保護や環境教育のプログラムとしてつくられた訳ではありません。自然から学ぶ喜びを人びとに伝えるためにつくられました。心も身体も健康になるように考えられています。


もし、指導者のみなさんがこのことを理解し、ネイチャーゲームが人生を幸福に送るための手助けをするプログラムだということを多くの方に伝えることができれば、シェアリングネイチャーの活動は今後さらに広がっていくと思っています。

「ウェルネス」の意味

以上は、研究大会と東京公演でコーネル氏が話された内容をまとめ、そのなかから「シェアリングネイチャー・ウェルネス・プログラム」の要素を抜粋したものです。

そしてそこには、シェアリングネイチャーが人びとの心に健康(平安)をもたらす例がいくつも紹介されています。



そこで研究大会の講演が終わったあとに、コーネル氏に彼がイメージする「ウェルネス」の意味を尋ねてみました。するとコーネル氏は、「心と身体のよりよい状態」「ウェルネスを持った人=心が平安である人」と説明しました。


外的要因によってもたらされる問題も、それぞれの人が"幸せになるための最終的な解決方法"は、結局その人自身の中にしかない。つまり、現実を受け入れそれを「よし」とできるか否かの、心の問題であるというのです。そして日本にはもともとそのような文化があると思うと・・・。


 

日本には『なせばなる、なさねばならぬ何事も』という言葉がありますよね。つまり"希望を抱いて取り組もう!"という前向きな文化を持った国民なのです。そしてもうひとつ、日本人の心には、常に「みんな」という意識があるように思います。グループニーズに対して敏感。つまり"他者への配慮"がある国民なのです



このような日本の国民性は、北欧のように命を奪うような厳しい環境でもなく、赤道直下のように何もしなくても野菜や果物が実る環境でもない、日本の自然がつくりだしたものだろうと、コーネル氏は感じているといいます。そして、それはシェアリングネイチャーが目指すものにとても近いのだと。

「シェアリングネイチャーの目指すもの」が、またひとつ大きく広がった講演でした。



取材・文/伊東久枝
構  成/編集部