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小中学生の自然体験
[小学校教育]総合的な学習の時間にネイチャーゲームをやってみた
ネイチャーゲームを使った、小学校での授業の様子をお届けします。
小学3年生の総合学習にネイチャーゲーム

知り合いの先生に頼まれて3年生の「総合的な学習の時間」にネイチャーゲームをやることになりました。



4クラスを2クラスずつ2コマに分けて実施。時間はそれぞれ90分。



1コマ約70人の元気な子ども達相手のネイチャーゲーム、なかなか壮観です。



走らないでね!

と言ってもそこは3年生。その時だけは



は~い

とお利口な返事が返ってきますが、すぐに早歩きから駆け足になってしまいます。ま、それだけ「やりたい!」気持ちが勝ってしまうんだろうと目をつぶります。



今回の依頼は、子どもたちに敷地内にあるビオトープに着目してもらい、ビオトープを初めとした校庭の自然環境全般に目を向け、身近な自然に関心を持ってもらうための導入部分としてネイチャーゲームをやってほしいというもので、活動をするなかで子どもたちなりの“課題”が出てくれば大成功!



低学年の生活科から一歩進んで、自ら課題を設定し、課題解決のための方策をあれこれ考え、友だちと協力しながら解決していくという年間を通したプロジェクトで、依頼を受けたこちらもそれなりに周到な準備が必要です。




授業本番に先立ち、念入りに校庭の下見も実施しました。



〈フィールドビンゴ〉は絶対入れようと、子どもたちに気づいてほしい項目を選び出して記録します。



この小学校は創立してまだ20年ほどしか経っていませんが、さまざまな樹木が意図的に植えてあったり水場もあったりで、生き物たちの憩いの場になっています。4月中旬の下見時には池にメダカが泳ぎ、ザリガニも元気にハサミを振っていました。

遊びながら学びを引き出す

そして本番の5月13日。



最初のアクティビティは〈ごちそうはどこだ〉です。



子どもたち一人ひとりにドングリを1つ渡し、クラスごとに決められたエリア内に隠します。全員が隠し終えたら相手エリア内に隠されたドングリを探します。1、2組合わせて70個あったドングリはどうしても見つけられないものが5~6個出てきます。



gochisou.JPGどんぐり、上手に隠せたかな?



さて、その見つけられなかったドングリはどうなってしまうか、ということで、用意した本を読みます。



ドングリを食べる生き物が冬越しのためにあちこちに隠したドングリ、そのうちのいくつかは見つけられず、春になるとそこから芽が出てドングリの木があちこちに仲間を増やしていくという話です。自然界における生き物同士の関係に気づいてもらうアクティビティで、遊びながら子どもたちは学んでいきます。



次はいよいよ〈フィールドビンゴ〉です。視覚を中心に、触覚、聴覚、嗅覚を使って校庭のさまざまな自然に気づくアクティビティです。



16の項目はでたらめに入れたものではなく、いろんな関係性が見られるような項目にしました。



bingo.pngオリジナルで作成したビンゴカード



例えば、ダンゴムシやミミズがいるということは、彼らの餌となる落ち葉や枯枝がありそれを落とす木がある。分解された落ち葉はふかふかの土となり、小さな生き物たちの住みかとなる。そこでできた栄養分は草の栄養となりきれいな花を咲かせてくれる。花に集まったアブラムシをめぐってアリとテントウムシのバトルが始まる。漁夫の利を得たチョウチョは花から飛び出した途端うっかりクモの巣に引っかかって一貫の終わり。



一見何の繋がりもなさそうな虫や草木が実はお互いにそれぞれ影響しあいながら生きていることに“気づいてくれればいいな”という思いで作ったビンゴカードです。が、子どもたちはそんな作者の思いはそっちのけで、カードにある項目探しに夢中で、校庭中を走り回っていました。



フィールドビンゴ6.JPGどんなものを見つけたかな?みんなでふりかえり。

体験を通して学んだことはきっと忘れない

それでいいんです。



子どもが夢中になって友だちと一緒に一つの課題に取り組む、その中で、今まで気づかなかった身近な自然の営みにチョットだけ関心を持ち、



“ダンゴムシがいる場所ならすぐわかる”
““キノコが生えてる場所知ってるよ”
““ドングリの木って、リスに仲間を増やしてもらってる、すごいよね!”

そんなことが遊びの中で(ホントは授業ですが)気づいてくれたらもうけものです。




下見の時にはビオトープに水がありましたが、晴天続きで本番の日はほとんどありませんでした。



ザリガニはハサミだけ転がっていて、あれだけいたメダカの姿はありません。でも、よーく見ると、泥水のたまりに、チョロっとうごめくものが!瀕死のメダカでした。子どもたちと数匹助け出し、きれいな水の水槽に入れてあげました。



あの時のメダカは今でも元気です

と手紙にあり、とっても嬉しかったです。



ビンゴゲームをしなければ気づかなかった干からびたビオトープ、そこに集まるさまざまな生き物の繋がりも断たれてしまったかもしれません。



子どもたちの興味関心は刻々と移り替わり、今でもどれだけの子が校庭の虫や草木に関心を持ち続けているかは分かりませんが、体験を通して学んだことや体験そのものの記憶はきっと残っていることと思います。



これから学年が上がるにつれ、ふと何かの拍子に小さな虫やドングリを見つけた時、そこにいる生き物たちの命の営みに思いを馳せる一瞬があったらとっても嬉しいです。



letter.png

後日、小学校から送られてきたお礼の手紙

inocchi.png

井上 満 いのうえ みつる

公益社団法人日本シェアリングネイチャー協会 常務理事



ネイチャーゲームの楽しさ、素晴らしさを一人でも多くの人に伝え、共に感動をわかちあいたい、そんな思いで実践をしています。自然の中にいるたくさんの命に直接触れ、命を実感できるような自然案内人をめざしていきたいと思います。