総合トップ > 会員のページ > ネイチャーゲームニュースレター > 特集 さまざまな分野でのネイチャーゲームの活用や情報提供 > Vol.6 畑と消費者をつなぎ生産者の思いを伝えるネイチャーゲーム

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ネイチャーゲームニュースレター
[特集]さまざまな分野での
ネイチャーゲームの活用や情報提供

農業の現場で広がる自然体験

畑と消費者をつなぎ生産者の思いを伝える
ネイチャーゲーム


毎日口にする野菜を通して
食の本質と命の大切さを伝えたい!
私たちは毎日の食事で、野菜や穀物などの農作物を食べています。しかし、その農作物が育つ畑や田んぼに足を運ぶ機会はほとんどありません。そして消費者は、生産者と顔を合わせることもなく、「材料」として野菜を購入し、日々消費しています。そのため、生きていくために野菜や穀物の「命をいただいている」という実感が薄らいでいます。そのようななか、明石農園の明石誠一さんは農園で行うイベントにネイチャーゲームを取り入れて、農園と消費者をつなぐ活動を行っています。この取り組みに農業分野でのネイチャーゲームの可能性を探ってみました。

明石誠一さん

日本体育大学卒業後、ワーキングホリデーで1年間カナダに滞在。帰国後さまざまな仕事で資金をため、1年間の農業研修生を経て、2003年に明石農園をはじめる。現在、無肥料無農薬の自然栽培に挑む傍ら、野菜や穀物の収穫を通して、「命の大切さ」を伝える自然体験活動を行っている。
 
野菜は食べられるために生まれるのではない
 トマト、ナス、ニガウリ、ニラ、ピーマン、オクラ、キュウリ、ネギ。この8つの野菜のうち、同じ仲間はどれだかわかるでしょか?
 8月1日、埼玉県入間郡三芳町にある明石農園で行われた生産者と消費者の交流イベントでは、このような明石誠一さんの問いかけに、親子連れや女性のグループ、総勢20名弱の参加者が、いつも見慣れた野菜を丹念に見直しながら、頭を抱えていました。そして虫眼鏡を持って、畑のなかを右往左往。それぞれの野菜がなっている幹や花、葉などを覗いてみたり、触ったり、葉っぱをちぎって匂いをかいだり。五感をフルに使って、「仲間探し」に没頭です。最初は「ゲームはいいわ」といっていた女性グループも、気がつけばいつしかゲームに加わり、すべての野菜の花を並べて意見交換に夢中です。
 参加者といっしょに畑を歩いてみると、ゲームの前にさんざん実を摘んで歩いていたのに、幹の様子や、実のつき方、花や葉の形など、見ていなかったことの多さにびっくりします。
 そして最後に答え合わせ。それぞれのグループの意見が出揃ったところで、明石さんが答えを見せて(!)くれました。それぞれの野菜を縦・横に切ってみると、外見はまったく違う野菜たちが、自ら仲間を知らせてくれます。トマト、ナス、ピーマンは、水分の量に大きく差がありますが、輪切りにすると種のつき方がそっくりです。キュウリとニガウリは、縦に切ると仲間であることがよくわかります。そして熟したニガウリの種は、かぼちゃにそっくり。かぼちゃも同じキュウリの仲間です。最初ピーマンと同じ仲間にしたグループが多かったオクラは、実のなり方がまったく違い、仲間がいない野菜だということが分かりました。
 野菜を食べるとき、種にはあまり意識がいきません。むしろ「邪魔者」というイメージが強くはないでしょうか? しかし「野菜は人間に食べられるために生きているのではないんです。自分の子孫を残そうと種をつけ、生きているんです」とは、明石さん。こうして種を見せ、それが育って実をつけている風景を見てもらうことで、野菜の一生をイメージしてもらえるのではないかと考え、このような活動を考案したそうです。
 「自分たちと同じように生きている"野菜の命"を、その途中で私たちがいただいているんだ、ということを理解してもらいたいんです」
 そうすれば、形式だけではない、生きた「いただきます」の心が根付くと思うから。
野菜の仲間分けゲームに、小さな子どもたちもどっぷりはまって。
 
自然の命を「いただきます!」
 明石農園は、3年前ほど前に有機農法から無肥料無農薬という自然農法に切り替えました。有機物でも「肥料」といわれるものは畑に加えず、ただ雑木林の落ち葉を集めてつくった土を畑に入れるだけ。多少収穫量は減りますが、害虫の大発生や病気になる野菜が減りました。そして、そうして育った野菜から次の年に蒔く種を自家採取しています。
 「野菜も、自分の子孫を残すためにその土地にあった種を残そうとします。ですから、種は他の土地でできたものを蒔くより、その土地で育った野菜からとった種を撒くほうが、その土地にあった健康な野菜を育てることができるはずなんです」
 明石農園の畑には、トマトやニガウリなどがたわわにみのり、ナスもピーマンもみずみずしく、生で食べられるほど。熟れて土に落ちた真っ赤なトマトには、カブトムシが何匹もついていたりします。いつしか子どもたちは、昆虫採集に夢中です。これぞまさしく、大地が育てた自然の恵み。その畑を見ていると、私たちは自然の恵みをいただいて生きているのだということが、素直に心に落ちてきます。
 最初は割れてしまったトマトを見て、摘むのをためらった手も、明石さんの「トマトは雨に当たると割れちゃうんです。でも味は変わらずおいしいので、採って食べてくださいね」という言葉に、これも自然の姿だなと、いつしか手が伸びるようになりました。
同じ仲間(科)の野菜は、切ってみると意外な共通点が。
 
農業の場で広がる、自然ふれあい活動
 「キャンプのインストラクターをしていた大学時代、ひとりで森に入ったときに、樹も生きていて意識があると仮定すると、自分が一人ではない気がして、とても気持ちがよかったんです」
 実は、明石さんはそのような自然のなかにいる心地よさを伝えるために、農業をはじめたといいます。
 「最初から農業を通した自然体験、"命の教育"をやりたくて、農業をはじめたんです。自然と対峙すると、命の大切さがとてもよくわかります。命はそのままで、ひとつひとつ違っていていいのだということに気づくんです。そして"食べる"ということは、命と直結している。どのようなものを食べるかで、暮らしは変わっていきます。農業をしていると、それがとてもよく見えてくるんです」
 農業に従事した当初より、仲間と集まって、あぜ道で〈フォールドポエム〉や〈音いくつ〉などをやっていたそうです。そして昨年、奥さんの沙絵子さんとともにネイチャーゲームのリーダー資格を取得し、現在は講習会で知り合った仲間の力を借りて、年に数回、農園に消費者を招き、植え付けや収穫体験と合わせた交流イベントを開催しています。
 明石夫妻の他にも、畑や田んぼなど「農業」の場を利用した自然体験は、10年ほど前より日本各地で進められています。さらに最近では、当初中心だった田植えや稲刈りなどの農業体験に、自然とのふれあい活動を取り入れるケースも増えています。(社)農村環境整備センターが推進している「田んぼの学校」で、毎年実施している企画コンテストのプログラムのなかにも、〈コウモリとガ〉〈カモフラージュ〉や〈(あぜ道の)宝探し〉など、ネイチャーゲームを取り入れたものが目に付くようになっています。
 「最近は兼業農家が増え、農家だけでは農業が成り立たなくなっている地域も少なくありません。しかし『農作業を手伝ってください』というだけでは、人は集まりません。そこで『農業をしたことがない人に田んぼや畑に親しんでもらえるようなプログラムがほしい』と思っている農家の人たちはたくさんいます」とは同センターの加納麻紀子さん。
 そして、2017年までに全国2万3000の小学校で、農山漁村での1週間程度の長期宿泊体験活動を行うことを目的とした「子ども農山漁村交流プロジェクト」が、農林水産省、文部科学省、総務省の3省連携で始動しました。
 このように農業の場に自然体験活動が広がるなか、ネイチャーゲームは、その土地の自然と出会うきっかけづくりとして、また深く自然を知るためのツールとして、さまざまな可能性があるように思われます。ネイチャーゲームのリーダーがサポートできる場の、可能性を感じます。
虫メガネで野菜の花をじっくり観察したり、匂いをかいだり、触ってみたり・・・
 
やってみよう! 野菜がテーマの活動
取材・文/伊東久枝
取材協力/明石農園 明石誠一 農村環境整備センター 加納麻紀子
写  真/伊東久枝・編集部
構  成/編集部

※本記事は情報誌「ネイチャーゲームの森 vol.67」(2009年9月15日発行)特集より転載しています。
 団体名称、役職者名等について発行時の表記となっている場合があります。

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