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ネイチャーゲームニュースレター
[特集]さまざまな分野での
ネイチャーゲームの活用や情報提供

超高齢社会の自然体験

高齢者の心と体の健康を
ネイチャーゲームで


「高齢者学級」や老人ホームで
ネイチャーゲームを実施しました。
その効果は・・・
 現在、わが国では、急速に高齢化が進んでいます。21世紀なかばには、3人に1人が65歳以上という、「超高齢社会」を迎えるだろうといわれます。そのようななか、高齢者が元気に暮らし、社会にとけこんで生活していくことは、今後の大きな課題です。その実現を目指した試みとして、市町村で開講している「高齢者学級」や、老人ホームなどの高齢者施設で、ネイチャーゲームを実施するケースが現われています。自然体験活動を行うことが、高齢者の心や体にどのような意味をもつのか、取材をしてみました。

庭田安治さん

新潟県ネイチャーゲーム協会理事長、ネイチャーゲームインストラクター
 

降旗信一

社団法人日本ネイチャーゲーム協会理事長、東京農工大学、東京農業大学、和光大学、学習院大学非常勤講師
 
活動が、過去の経験を呼び起こす
 「この花、放射線状よね」「排水溝のふたは格子状だな!」...。
 公園の生垣や建物の細部を真剣に眺め、カードに書かれた「形(パターン)」と同じものを自然の中から探し出しては、満面の笑みを浮かべる高齢者の方がたの姿は、童心に戻ってイキイキとしています。
 5月14日に東京都小金井市で開講された高齢者学級「栗の実学級木曜会」の参加者のみなさんは、足腰もしっかりして、とてもお元気。平均年齢が70歳を越えているとは思えません。
 そして2009年度連続講座の第1回に実施されたネイチャーゲームに、最初はちょっとけげんな顔をしていた人も、ゲームをひとつ行うたびに笑顔が増え、3つ目のゲーム〈フィールドパターン〉では、会場となった公民館に隣接する公園に出て、自然の中の新たな発見に、みなさん目を輝かせていました。
 この日行われたアクティビティは、ほかには自己紹介を兼ねた〈はじめまして〉と、軽い運動効果を狙った〈木をつくろう〉です。
 用紙に書かれた質問を、一問ずつ相手を替えて聞いていく〈はじめまして〉では、「川や海で泳いだことがありますか?」という質問に、淀川、江戸川、利根川など、今では汚れて泳げない川の名前が次つぎとあがり、数十年前の日本の自然の豊かさがうかがえ、うらやましさを覚えたりもしました。
 このような、高齢者を対象に行うネイチャーゲームは、まだ事例も少なく、日本協会としても新たな試みのひとつです。そしてそこには、「本来子どもを対象につくられたネイチャーゲームを体験することに、参加者の抵抗感はないのだろうか」という不安もありました。しかし、ゲームを重ねるごとに増えていく参加者の笑顔と会話の数を見ていると、それはまったくの取り越し苦労だったような気がします。
〈フィールドパターン〉を行い、花びらの形や樋の形などに放射状やV字を見つけて喜ぶ参加者のみなさん。小金井市『高齢者学級木曜会』
 
孤立や、引きこもりを解消する
 新潟県で昨年より、有料老人ホームで定期的にネイチャーゲームを実施しているのが、インストラクターをしている庭田安治さんです。ここでも、最初は屋外に出ることを拒んでいた人が、回を重ねるごとに積極的に参加するようになり、今ではネイチャーゲームの日を楽しみに待っているといいます。
 そして、当初は屋外での活動を心配していた施設の介護スタッフからも、今では積極的な提案が出され、この5月にはお花見を兼ねてバスで近隣の公園に出かけてネイチャーゲームを楽しむという、「大イベント」も行いました。
 「課題をこなすうちに自然に目がいくと、みなさん表情がイキイキとして、活力が沸いてくるように思います。自然を介して昔体験したことを思い出すことも、元気を呼び起こす力になるのではないでしょうか」とは庭田さん。
 活動をきっかけにそれまで知らなかった昔の話が聞け、参加者同士、また介護者と参加者の会話が生まれ、新たなコミュニケーションができることもあります。そしてそれはその場だけで終わらず、共通の話題となり、施設内でのふだんの会話も多くなったと聞きます。
 また、歩くことをおっくうがり、すぐに座ったり車椅子に乗ったりしてしまう人が、指定されたカードの色と同じ色のものを自然のなかから探してくる〈森の色合わせ〉をしているうちに、数十メートルも歩いてしまい、介護者を驚かせたこともありました。
 「自然とのふれあいをつくることは、高齢者にとって、心をリフレッシュさせるだけでなく、活力を沸かせたり、話題の幅を広げたり、運動に楽しさを添える重要な活動だと思います。高齢者施設でのネイチャーゲームの実施は、お年寄りの孤立や、引きこもりを解消することにもつながると思います」とは庭田さん。そこには、介護予防や自立支援としてのネイチャーゲームの可能性も感じられ、今後は、個人の活動ではなく、地域の会の活動として広げて行きたいと思っているそうです。
高齢者の特質と、広がる可能性
 ただし、高齢者を対象とした活動の実施には、さまざまな課題もあります。
 目や耳が悪い方も多く、なかには脚が不自由になり車椅子で移動をしなければならない方、半身不随で手足が不自由な方など、身体的なハンディが多かれ少なかれあるものです。また、元気な方であっても、転倒しやすく、さらに転倒時に骨折の心配があるなど、高齢者特有の安全管理が必要です。体力がないので、長時間の活動はむずかしい場合もあります。
 そのため、高齢者を対象とした活動では、参加者に合わせて介護者の協力を得る、安全管理をしながらそれぞれの参加者に活動をうながすスタッフを配置するなど、サポート態勢を整えることも大切です。
 できるアクティビティにもある程度の制限があります。小金井市の講座を担当した日本協会の降旗信一理事長は、激しい運動のあるものをさけ、課題のシートなどは拡大コピーをして文字を大きくするなどの工夫をしたといいます。また、屋外に出ることが難しい場合には、〈タッチ&フィール〉のような活動も、自然のなかにあるものを探しに出るのではなく、鉢植えの植物などを室内に持ち込んで見せるなど、運動量を減らす工夫も必要です。
 この他にも、高齢者を対象に実施するためには、まだまだ工夫をしなければならないことがたくさんあるでしょう。けれど、庭田さんは「工夫をすれば、体が不自由な方でも、認知症の方でも、できることはたくさんあり、さまざまな感覚を使った活動で、生活の質の向上を助けることが可能だと思います。さらにネイチャーゲームが誘う"自然との一体感"には、がんなどで終末期医療を受けている方への活動の可能性も感じます」と話します。
 高齢者を対象としたネイチャーゲームには、多くの希望と可能性があるようです。
〈カモフラージュ〉のわかちあいでは、写真絵本をつかって擬態の説明を。写真に見入る参加者の皆さん。
 
やってみよう! 高齢者とネイチャーゲーム
取材・文/伊東久枝
取材協力/小金井市公民館東分館 庭田安治 降旗信一
写真提供/庭田安治 伊東久枝
構  成/編集部

※本記事は情報誌「ネイチャーゲームの森 vol.66」(2009年6月15日発行)特集より転載しています。
 団体名称、役職者名等について発行時の表記となっている場合があります。

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