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保育・幼児教育
「アクティブラーニング実践書!体験と学びを深めるネイチャーゲーム」発刊に寄せて
2021年2月に発売された「アクティブラーニング実践書!体験と学びを深めるネイチャーゲーム」。
その発刊に寄せて、東京大学大学院特任教授(当時)であり、当協会代表理事でもある日置光久先生よりメッセージを頂きました。
今あらためて考える、「体験」と「学び」の深まり
日置光久(ひおき・みつひさ)

東京大学大学院教育学研究科特任教授(当時)。
2021年6月より日本シェアリングネイチャー協会代表理事。
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行動と出会いに制限がかかって、1年が過ぎようとしています。



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新型コロナウィルスの遺伝子情報を直接体内に注入するメッセンジャーRNA(mRNA)タイプの高度なテクノロジーを使った新型ワクチンがワープスピードで開発され、わが国でもその接種が始まりました。未曽有の今回の事態の鎮静化に大きく貢献してほしいと心から願っています。



考えてみれば、この1年で、われわれの生活は大きく変わってしまいました。これまで当たり前に行われていた対面の会議や講義、研究会や打ち合わせは、ほとんどオンラインに移行しました。



ギャラリービューで5×5のマトリックスに切り出されて並んでいる学生の顔を見ながら、あるいは画面共有で大写しになった発表者のプレゼン資料を眺めながら、「体験」とは何だろう、「学び」とは何だろうと考えた1年でした。

ますます注目される「アクティブ・ラーニング」

新学習指導要領の全面実施のもと、学校においては今年度から新しい教育課程がスタートしたわけですが、コロナ禍とまともにバッティングし、大変な1年だったと思います。先生方、そして何よりも子どもたち一人ひとりが、様々な工夫を凝らし、悩みつつ助け合いこの難局を乗り越えてきたのだと思います。



そこでの学びを考えるとき、一つの方向性を示してくれたのが「アクティブ・ラーニング」と言われる、「主体的、対話的で深い学び」です。



「主体的」とは子ども一人ひとりが「学びの主人公」(Active Learner)となるということです。「教えられたことを覚える」のではなく、自ら問いを持ち、その解に向けて能動的に行動を起こすということです。与えられることではなく、自ら求め、動くということが「学び」の本来なのです。



そのためには、子どもたちが自らの感覚を働かせ、問いを持ち、自らの身体的な活動を伴って探究することが必須となります。



このような学びは、直接的で意図的な体験のなかで初めて成立するものです。



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対話的な学びに生きるSharing Natureの精神

「対話的な学び」は、オンライン全盛のこの1年、最も問われた学びではないでしょうか。



オンラインは、まさに対話のメディアです。



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この1年間、空間移動の時間のロスなく、また場合によっては録画により時間の制約からも解き放たれてオンラインにより物事が動いてきました。オンラインによる対話の学びについて、我々はどのように評価すればよいのでしょうか。



一つ言えることは、「対話的な学び」とは相手となる「他者」との関係性を取り結ぶことにより成立する「学び」だということです。



その関係性は、単なる記号や情報の交換を超えて、共に学びあう喜びや、一緒に一つの自然の姿に触れる楽しさ、感性や感動の交流という広がりや深まりがあるのではないでしょうか。そもそもネイチャーゲームの”Sharing Nature”とはそういうことだと、私は理解しています。



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そして形作られる「深い学び」とは

「主体的な学び」、「対話的な学び」の充実を図っていく中で、「深い学び」が形作られていきます。



あまりにも当たり前ですが、改めて強調しておきたいのは「学び」には「深さ」があるということです。「深さ」の発見です。



「学び」は単なる情報の交換や暗記ではなく、相互に関係づけたり、意味づけたりすることにより探究的に深まっていきます。

「深さ」を発見することにより、世界が広がり、より楽しさが増えていく実感が生まれるのです。

そして、この「深まり」にはゴールがありません。より深く、さらに深く、「学び」は自らの内省へとアクセスしていきます。



ネイチャーゲームの「自然との一体感」とは、このような境地を指しているのだと、私は理解しています。

新しい時代の体験と学びのガイダンス

新学習指導要領のキーワードである「アクティブ・ラーニング」を切り口として、幼児教育や小学校教育の新しい方向性を示すとともに、そこでネイチャーゲームをどのように考え、実践していけばいいのかについて、幼児教育の大家神長美津子先生(國學院大學教授、元文部科学省教科調査官)と共同監修で、書籍をまとめさせていただきました。



幼児教育編では、年齢別に活動のねらい、5領域、子どもの気づき、幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿につながる効果などがイラスト入りで具体的にまとめられています。



小学校教育編では、学年、単元の目標、単元の計画、本時のねらい、やり方、推しポイントなどがイラスト入りでわかりやすくまとめられています。



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ポストコロナの時代はどうなっていくのでしょう。



この1年で爆発的に普及したオンラインは引き続き活用されていくでしょうが、その一方、リアルな体験はビフォーコロナの時代よりも一層深まりを持った形でその価値が再評価されていくと、私は考えています。



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この度上梓した書籍が、新しい時代の体験と学びのガイダンスとして活用されていくことを期待しています。



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