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創刊100号だから"五感"の効用とネイチャーゲームについて"哲学"してみた(SNL2017年12月発行)
自然体験に「五感」を積極的に使うことそれは、
ネイチャーゲームのひとつの大きな特徴です。
五感を通してからだ全体で自然を感じとることにより
「自然」との一体感を得、共感へとつなげます。
そして、さらにこの「五感」にはもうひとつ、
見落とされがちな大切な効果もありました
外へのセンサー内への引き金
内的「自然案内人」
【哲学者】
加藤 博子(かとう・ひろこ)さん

名古屋大学大学院卒、文学博士。ドイツ・ロマン派思想を専門とする。大学教員を経て、現在は複数の大学で非常勤講師として美学・文学を教える一方、一般向けにやさしい哲学講座なども開催している
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ネイチャーゲームでふたつの自然と出逢う



視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚...私たちは、日々の生活のなかでも常に五感を使い、周囲の環境を認識し、行動しています。それは危険の察知による防御反応であったり、心地よさからの愛着行動であったり、好奇心の刺激による精神の高揚であったり...。



その五感のセンサーが繊細できめ細かいほど、「人は幸せを感じられる」というのが、加藤博子先生。大学で美学や文学の教壇に立つ一方、カルチャーセンターなどで一般向けのやさしい哲学講座も行っています。さらに最近では『知の訪問介護』と称して、高齢者の自宅を訪ね、文学や哲学を講じて、日常を離れた会話の楽しさを提供するなど、精力的に活動する気さくな哲学者です。



そうして多くの人と接するなかで、最終的に人を幸せにするのは、その人個人が持つ「内なる自然の豊かさ」ではないかと思う、というのです。そして、その内なる自然の豊かさをつくるキーワードが「五感」なのだと。



子どものときは、さまざまな種類の刺激をたくさん受けて、まずは『五感のセンサー』をできるだけきめ細かく、繊細にしておくのがいいと思います

ネイチャーゲームのように楽しみながらそのような刺激を受ける機会を持つことはとても大事だと、加藤先生。



そのときはよくわからなくても、刺激をたくさん浴びておくことが大切です。いろんな自然に触れて、経験の振り幅を大きくしておく。いつかその体験がわかる日がくるように思います
「受信」と「発信」五感が持つふたつの機能
五感を語るとき、多くの場合はその「受信器」としての機能が注目されます。視覚や聴覚などによって、まわりを認識する機能です。しかし、人間の五感は受信器であるとともに「発信器」の役割を持っており、人が幸せになるためにはそれがとても重要なのだというのが、加藤先生です。



外から入ってくる情報が五感を刺激すると、それが引き金となって思い出が蘇り、自分の体や記憶に刻み込まれている体験が鮮明に立ち上がってくる。その〝内面世界〟ができるだけ豊かであること。それが幸せなのだと思うんです

確かに、ふとほほに感じた風で、どこからか漂ってきた香りで、忘れていた経験が一瞬にして蘇えることがあります。そして再び心が熱くなったり、うれしくなったり、切なくなったり...。



最近は技術の進歩で、テレビや映画で普通では体験できないようなことをいくらでも観たり聴いたりすることができます。けれどそれらの体験は、後に何かの刺激で体内から蘇って内面世界を豊かにしてくれるでしょうか。バーチャル体験しかしていない人が、外からの情報を充分得られなくなったとき、幸せに時を過ごせるのか、疑問です



そしてバーチャル体験を補填し、豊かな追体験にするのも、実体験の内なる記憶があってこそできると加藤先生はいいます。本を読んでありありと場面が目に浮かぶ、海の映像を観て水の感触を肌に感じる...。それらは、外からの刺激で呼び起こされた内面世界の〝自然〟なのです。



体験は頭で記憶されるのと同時に、五感を通して心や筋肉レベルでも記憶されるんです(加藤先生)

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必要な実体験とは...
昔は生きているだけで、五感を通して外からの刺激がたくさん入ってきました。そして本来の実体験というのは〝いいこと〟ばかりじゃないですよね。昔、冬の朝の水汲みの水は冷たく、外気は寒くて辛くて...。



本物の体験は、汚かったり辛かったり、痛かったりする。それらの体験を通して、五感のセンサーは繊細にきめ細かくなるというのが加藤先生の考えです。



もちろん安全確保はしなければなりません。でもそのうえで、自然体験は〝いいこと〟ばかりではなく〝悪いこともいいこと!〟という体験をしてほしいと思います。大雨に打たれてびしょ濡れになったり、汚れてきたなくなる体験をしたり...。気持ちのいいことだけを選んで体験をしていたのでは、日常の延長でしかない。脳に刻まれる体験というのは、ドキドキ感や傷みなど、ある程度の必死さがないとダメで、表層的な体験はいくらやっても残らないんです。そういえば『ゲーム』という言葉には、狩猟対象となる『獲物』という意味がありますよね

そこには真剣勝負でドキドキする感覚がある。それがいいと、加藤先生。単に○×をつけるようなゲームは、知識を得るという点ではいいが、体験としてはあまり意味がないというのです。



最近ではテレビやインターネットで映像が日常的に生活に入り込み、映像で観たことを本物に触れたように感動していたりします。しかし、「戦場や被災地の映像を平気で観られるのは、視覚的な情報だけだからです」という加藤先生の言葉にはっとしました。



本当の戦場や被災地、火事の現場にも、鼻を覆いたくなるような臭いや、人びとの声や、着弾の振動、熱風など、視覚以外の多くの情報があふれているはずです。それが映像と一緒に流れてきたら、その情報を家庭で平常心を持って受信できるでしょうか

それらを実際に体験しなければいけないということではなく、想像できる力。それには、繊細できめ細かな五感のセンサーを持っていることが不可欠なのだろうと、お話を聞いて思いました。



バーチャル体験の進歩は、目をみはるものがあります。けれど、実体験と比べると、まだ絶対的に五感に与える情報量は不足しています。効率ではなく、無駄に思える小さな体験の積み重ねが、人生を豊かなものにしてくれる...。そのキーワードが、ネイチャーゲームで大切にしている、外なる自然を認識させ、内なる自然を引き出す「五感」なのです。



※五感を使ったネイチャーゲームについてはこちら(PDFデータ)から御覧ください。



「視覚」で楽しむネイチャーゲーム

【みる...を体験】

「視覚」は、すでに疑似的な技術がもっとも進んでおり、だまされやすい感覚と言えます。

さらに、生物は本来自分に必要な情報を選んで見ていますが写真や映像の進歩で、現代は本来なら「見ない」ものが暴かれている世界です。

自身の感性で、実際にあるものをしっかりと「観る」体験が必要です。



視覚のネイチャーゲーム



視覚のネイチャーゲームは、自然のなかにある「よーく見ないと見つからない形」を探したり、虫メガネを使った観察だったり...。同じ「見る」でもさまざまな工夫を凝らし、通常の生活では見えていない、見ていない世界への気づきを促します。

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Nature Game No.021 木の葉のカルタとり

自然のなかで見つけた落ち葉を「読み札」と「取り札」にしたカルタ遊びで、葉っぱの多様性を知る

●楽しみ方…同じ種類の落ち葉を2枚ずつ集め、一枚を「読み札」に、もう一枚を「取り札」にします。リーダーが見せる「読み札」と同じ種類の葉っぱを取ることで、形や質感などの違い(多様性)に気づき、木への親しみを育みます。



Nature Game No.013 ミクロハイク

虫メガネを使って観れば、足もとに広がる草むらがジャングルさながらに。ミクロ世界の探検へいざ出発!

●楽しみ方…虫メガネを地面に対して垂直に置き、腹這いになってじっくり観察しながら進みます。虫の目線で地球を探検すれば、原っぱはジャングル、小さな虫も怪獣のよう! 今まで見えていなかった、身近な大自然に遭遇です。



Nature Game No.096 フィールドパターン

自然のなかに隠れている「意外な形」や「面白い模様」を、さまざまな視点で探し出す

●楽しみ方…三角形、ハート、星、うずまき、網目など、カードに描いてある形や模様を自然のなかから見つけ出します。遠くの山の形や花のつぼみ、虫食いの穴...視点を変えながら探すことにより、観察力を高めます。



Nature Game No.103 めざせ名探偵

葉や樹皮などの「証拠品」をヒントに、多様な木々のなかから1本の木を探し当てる

●楽しみ方…葉っぱや種、はがれ落ちた樹皮、そして特徴的な樹形が書かれたメモなど...。これらの「証拠品」をもとに名探偵さながらに推理をして、森のなかから1本の木を探し出します。楽しみながら、木の特徴を印象的に学びます。

「聴覚」で楽しむネイチャーゲーム

【きく...を体験】

人が死を迎えるとき、いちばん最後まで残る感覚が「聴覚」だといわれます。

一方、聴覚は選択能力をもち通常は聞きたくない音や重要でない音を無視し、自分が聞きたい音を浮かび上がらせています。

そして、じつは「聴覚」により感情が操作されることもあります。BGMの操作で、同じ映像でも悲しくも楽しくも見える...感覚です。



視覚のネイチャーゲーム



聴覚のネイチャーゲーム

ネイチャーゲームで耳をすますと、大都会の公園にも、通学路や通勤路にも、豊かな自然が存在していることに気づきます。いつもは脳が排除している音に耳をすませば、目を閉じていても多くの〝気配〟が感じられ、自然がずっと身近に感じられるはず。

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Nature Game No.033 暗闇を照らせ

夜の闇のなかで聴覚を研ぎすませ、相手の気配をキャッチする、スリル満点のゲーム

●楽しみ方…舞台は夜。屋外につくったコースを、音を立てずに忍び足でゴールまで進みます。見張り番の人は目隠しをして待ち構え、人の気配に気づいたら懐中電灯を照らして捕まえます。聴覚の感度が勝負の鍵!



Nature Game No.032 コウモリとガ

聴覚で風景を認識する「コウモリ」のように、目隠しをして餌の「ガ」を捕まえる活動的なゲーム

●楽しみ方…参加者全員で輪をつくり、コウモリ役の人が目隠しをしてまん中に立ちます。そして、コウモリ役が「バット!」と言うと、ガ役は「モス!」と返します。コウモリ役は、ガ役の声や気配をたよりに捕まえる楽しいゲームです



Nature Game No.149 鳴きまね合唱団

生きものの鳴き声を聞き取り、気に入った声の鳴きまねをしながら仲間を探しだす

●楽しみ方…録音しておいた生きものの鳴き声を、3種類聞きます。その声をカードにメモし、気に入った鳴き声をひとつ決めます。リーダの合図で一斉に鳴きまねをして、同じ鳴き声の仲間を見つけてグループをつくります



Nature Game No.002 木の鼓動

聴診器を木の幹にあててみると…なかから不思議な音が聞こえてくる。いったいそれは何の音?

●楽しみ方…聴診器の集音部を木の幹にあてると、水が流れるような風が吹くような、不思議な音が聴こえます。木を変えてみると、音の質や大きさも変わって、それはまるで木の鼓動のよう。季節を変えて、聴いてみてもおもしろい!

「触覚」で楽しむネイチャーゲーム

【さわる...を体験】

「触覚」は自身の外部と内部のはざまで起こる感覚です。

他の感覚が、自分以外の存在を伝えることに留まるのに対し、触覚は実際に存在を突き止めることができます。

触れ合うことで実感するため、心にもっとも影響を与える感覚ともいわれています。

「だっこ」に代表される、触れ合うことで生まれる安心感や依存心の是非が問われることもあります。



視覚のネイチャーゲーム



触角のネイチャーゲーム 触覚のネイチャーゲームは、手はもちろん、足の裏やほっぺた、腕など...からだ全体で自然を感じ取ります。気持ちいい、痛い、変な感じ、不思議...触覚はじつに多様です。そして、心が落ち着いたりざわざわしたり...心の変化にも目を向けてみてください。

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Nature Game No.051 裸足で歩こう

裸足になって、足の裏全体で地面を感じながらゆっくり歩けば、内なる野生が呼び覚まされる

●楽しみ方・・・まずは、裸足になって「しのび足」の練習です。足を側面から地面に付け、ゆっくりと足裏全体を地面におろし、体重をかけていきます。この歩き方に慣れたら、いろいろな地面を静かに歩き、あとで感想をシェアします。



Nature Game No.126 感触の宝箱

触覚を頼りに、自然のなかから「同じ仲間」を探しだすゲーム。思わぬものが同じ触感でびっくり!

●楽しみ方…参加者に探して欲しい「感触」をもつ物を、中身が見えない箱や袋に入れておきます。それを、参加者一人ずつに触ってもらい、自然のなかから似た感触のものを探してきてもらうゲームです。



Nature Game No.065 てざわりフィールドビンゴ

自然のなかにある多様な「てざわり」感覚を集めたビンゴゲームで、自然を触る

●楽しみ方…チクチク、つるつる、ふわふわ、ざらざら...といった「てざわり」の感覚9種類が書かれたビンゴカードを持って、自然のなかへいざ出発。たくさん「ビンゴ」ができるように、いろんなものを触ってみましょう。



Nature Game No.174 地球を抱きしめよう

大の字になって地面に寝転がり、からだ全体で地球の感触を味わおう

●楽しみ方…屋外の安全な場所を探し、楽な姿勢で仰向けに寝転がります。深呼吸してしばらくリラックスしたら、うつ伏せの大の字になり「地球を抱きしめている」と思って、目を閉じ、しばらく静かに地球の感触を味わいましょう。

「嗅覚」で楽しむネイチャーゲーム

【かぐ...を体験】

記憶を深いところから呼び起こすことができる感覚です。

現代は濃い臭いを嫌い消臭剤やパッキングなどの技術を用いて生活から臭いを排除していますがそれは「生きた記憶の息の根をとめることになるかも」(加藤談)と。



嗅覚のネイチャーゲーム



嗅覚に特化したネイチャーゲームは少なく、〈かおりのしおり〉と〈かおりの小箱〉のふたつ。ところが、「自然のなかで好きな匂いは?」とたずねると、匂いとともに面白いエピソードを語ってくれる人がたくさんいます。

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Nature Game No.164 かおりのしおり

嗅覚を研ぎ澄ませ、自然の「かおり」をさがす

●楽しみ方…葉や木、花、そして地面や石など、自然のなかにあるさまざまなものの香りをかぎます。そして、気になった「かおり」について、感じたことや思い起こしたことなどをカードに書いてその場に置き、仲間とシェアします。

「味覚」で楽しむネイチャーゲーム

【味わう...を体験】

感覚は生物にとって危険回避のセンサーの役目を持ちます。

さらに「味覚」は、食欲がないことから自らの心身の異常を察知することができる、自己の内部の変化にいち早く気づくことのできるセンサーでもあります。



味覚のネイチャーゲーム



味覚のネイチャーゲームは、これまで作成されていません。それは、自然のなかには口に入れると危険なものがあるためです。そこで、今回は「味覚」の代わりに、自然界の「食う・食われる」に関する活動をご紹介します。



Nature Game No.016 食物連鎖

「食う」「食われる」自然界の生きもののつながりを体感する

●楽しみ方…「食う・食われる」の関係にある生物の名前を順にあげ、参加者の指に紐をかけて繋いでいきます。次に、環境破壊などのアクシデントをあげ、影響を受ける人(生物)が紐を引くと、紐の動きで被害の連鎖が実感できます。

「複合」で楽しむネイチャーゲーム

【いろいろ...を体験】

覚は個別に体験するわけでありません。

そして、そこには五感以外にも20ともそれ以上ともいわれる感覚が存在しているといわれます。

現代人はより精密に見るためより細かく観るため、技術を進化させ逆に本来有しているはずの感覚能力を弱体化させてしまった面があります(加藤談)。

実体験は無数の可能性を抱いてます。



複合のネイチャーゲーム



人間が受け取る刺激(情報)の80%は視覚から得ている...というデータがあるそうです。ネイチャーゲームでは、あえてその視覚を閉じることで、他の感覚を際立たせるものが多くあります。こうして、複数の感覚を使うことにより、体験はより深まっていきます。

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Nature Game No.005 目かくしトレイル

目隠しをして、森を探検! 視覚以外の感覚を研ぎすまし、見知らぬ自然に出逢う

●楽しみ方…森のなかにあらかじめ作っておいたルート(トレイル)を、目隠しをして探検します。視覚を閉じることで、聴覚・嗅覚・触覚がより研ぎすまされ、いつもは気づかない自然を感じることができます。



Nature Game No.086 サンセットウォッチ

夕方から夜へ。1日のうちでも劇的な自然の変化を目で耳で鼻で肌で...じっくり味わう

●楽しみ方…夕方、陽が落ちる前後の自然の変化を観察し、まわりで起きる出来事をひとつひとつ味わいます。鳥たちがねぐらにかえる...、一番星がまたたく...、風の速さや向きが変わる...。ドラマチックな自然の変化を観察しましょう。



Nature Game No.004 わたしの木

触って、嗅いで、抱きついて...。見ていない「1本の木」を、数ある木から探し出す

●楽しみ方…目隠しをした相手を、少し離れた場所から紹介したい木のところに案内し、幹や枝、葉っぱ、根元の地面などに触ってもらいます。スタート地点に戻ったら目隠しを外し、紹介した木を、感覚を頼りに探してもらいます。



Nature Game No.024 宝さがし

視覚・嗅覚・触覚・聴覚を働かせて、『宝ものリスト』にある自然の宝物を見つける

●楽しみ方…「トゲトゲのもの」「匂いのするもの」「音のするもの」「食べ跡」など、五感をつかわないと見つけられない“自然の宝物”を、『宝物リスト』カードを片手に森を歩いて見つけていきます。最後にみんなで紹介し合いましょう。


情報誌「シェアリングネイチャーライフ」Vol.19 特集(デザイン:花平和子 編集:伊東久枝、佐々木香織、水信亜衣)をウェブ用に再構成しました。
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