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ライフスタイル
日本普及35周年!記念号(SNL2021年9月号)
日本シェアリングネイチャー協会創立の35周年のタイミングで代表理事に就任した日置氏。本誌SNLの連載「日置せんせいに聞いてみました」でもおなじみでしたが、よりみなさんに「日置さんって、どんな人?」をお伝えすべく、その〝人となり〟に迫りました!
10歳の頃、喜界島での〝原体験〟が、変えることのできない自分を形作った。

日本シェアリングネイチャー協会新代表

日置 光久(ひおき みつひさ)

日本シェアリングネイチャー協会代表理事。東京大学大学院教育学研究科特任教授。元文部科学省視学官。日本学術会議連携会員。専門は、理科教育カリキュラム開発、環境教育/ ESD・SDGs論、自然体験論、認知学習論。


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父の転勤で喜界島に。何か悪さをやったせいで!?



──小学校理科教育の第一人者として活動している日置光久代表。きっと勉強好きなお子さんだったんだろうな、と子ども時代を伺うと……



出身は鹿児島県で、父親は鹿児島大附属小学校の教師でした。私が小学5年生のとき、奄美大島の隣、喜界島という小さな島に、父が初めての指導主事として赴任することになり、家族で移り住んだんです。



父は沖永良部出身で、離島教育に情熱を燃やしていたものですから、喜んで行くわけです。ところが、附属小の保護者は『そんな小さな島へ行くなんて、何か悪いことしたに違いない』って、噂が立ったそうですよ(笑



勉強そっちのけで游びほうけていた2年間



当時の記憶は鮮烈に残っています。子どもたちはみんな元気に短パン1枚。背丈より高いサトウキビ畑でかくれんぼをしたり、サンゴ礁の海で泳ぎ、貝や熱帯魚を捕ったりしてね。



おまけに、テレビがNHKしか映らないのは悲しかったな(笑)。島の方言がわからず、最初はとまどったけど、一緒に遊んでいく中ですぐに仲良くなった。子ども時代は、言葉より体験だよ。



勉強そっちのけ、真っ黒になって大自然の中で遊びほうけていましたよ。その調子で島で2年間過ごし、鹿児島の附属中学校に戻ると、すっかり落ちこぼれ(笑)。



しかし、このときの〝天然色の原体験〟が私の心の中でキラキラと光を放ち続けて、数十年経ち、ネイチャーゲームに出会って魅了されたのも、この原体験があったからですね。
『もののけ姫』は過去『、トトロ』は今、そして『ナウシカ』は未来を教えてくれた。

手塚治虫と宮崎駿──アニメから見る科学と自然



──まばゆい陽の光の中、目を輝かせながら自然にどっぷりつかる姿が目に浮かぶ。そして話題は日置少年を形作った『鉄腕アトム』、そして宮崎駿アニメへと移ります



喜界島に行く前、手塚治虫の『鉄腕アトム』が全盛で、私はアトムで育ったようなものです。理科に興味持ったきっかけでもあります。科学的に考えるだとか、ロボットの概念を知り、科学によって進化する未来に夢を膨らませていたんですね。今でも手塚治虫は天才だと思うし、科学観のようなものを教えてもらったと思っています。



一方で、自然に対する思想は宮崎駿が描くアニメに大きな影響を受けました。例えば『風の谷のナウシカ』で描かれているのは、科学技術が進み自然が破壊された世界、未来の自然や森の姿。『となりのトトロ』では昭和30年代、高度経済成長に向かおうかという頃の、自然がまだ残っている比較的現代に近い時代。



そして『もののけ姫』では室町時代、信仰の対象であった森が人間の経済活動によって侵食されていく様、これは過去の自然が描かれているんです。



日本人は縄文時代から、気候変動と地形と生活、それらすべてが森・自然とつながっていて、神聖なものを感じていた。



宮崎駿のアニメでは、その自然への圧倒的な憧れや思想を読み取ることができます。この自然観に共感する部分は多く、日本のすばらしさを発信していると思いますね。



──ここで「森はなんで〝もり〟というか知っていますか?」と日置代表。う~ん、編集部もライターも首をかしげていると……。



人が生活する前から存在した、盛り上がったところは神聖な場所とされていたんです。森はその〝盛り〟から転じた言葉。林は人が木を〝生やし〟ているから、はやしなんです



──へえ~!と一同。確かに、生い茂った森の中にいると、なんだか厳かな気持ちになるのは日本人としてのDNAなのでしょうか

自然を前に畏まる、そんな賢い人でありましょう
キリスト教が基盤となっている西洋では、森を信仰する思想はないでしょう。日本は古来、八百よろずの神々が森に棲み、人間が使わせていただいているという考え方。森にたたずむとおのずと背筋が伸び、清浄な気持ちになるのは、自然へのイケイの念からでしょう。イケイの『イ』、書けますか?訓読みわかりますか?



──またもやあたふたする一同に、〝してやったり!〟と微笑みながら続ける日置代表。



『畏』と書いて畏(かしこ)まると読みますね。畏れ多い気持ち。神様にお供えを奏上するときに『かしこみ、かしこみ』というのもその意味があると思います。



今の若い人にとっては死語かもしれないけど、女性が手紙の末尾に『かしこ』と書きますね。これも同じ意味からです。自然に宿る神々に対してかしこまる──日本人の心の拠り所のようなもので、私の好きな字です。



賢いも語源は『かしこ』からではないかな。神々を祀った場所で心が清浄で穏やかな気持ちになれる人が、頭がいいという意味の〝賢い〟。試験の点数では計れない本当の意味での賢さです。



現代教育は、論理的思考や計算、分析をつかさどる左脳優位の教育が中心となっていますが、点数としては直接見えない「賢さ」を培っていくことも大切なことですよね。

〝畏まる〟気持ちを忘れず、会員のみなさんと歩んでいく
新型コロナを経て、よりよく生きたいと願い、日常の中で自然との一体感を求める人間本来の姿が再認識されています。



私は科学者ではありますが、科学では計りきれない自然を前に畏まる気持ちを忘れず、代表理事として、今の時代にマッチした自然とのつき合い方についてよく考えつつ、会員のみなさんとともに歩いていきたい。



また、新代表理事としてはこれだけは言っておかなくちゃ。みなさん、相変わらずのコロナ禍でネイチャーゲームの活動も滞りがちですが、これからも物心両面で支えてくださいね。私もご期待に沿えるようにがんばります!



……と偉そうに言ってますが、家では妻がリーダーなので、私はここでも畏まっているわけです(笑)。



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情報誌「シェアリングネイチャーライフ」Vol.34 特集(取材・文:茂木奈穂子 編集:佐々木香織、校條真(風讃社))をウェブ用に再構成しました。
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