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小中学生の自然体験
シュタイナー教育とネイチャーゲーム
今号では、シュタイナー教育の実践者・としくらえみさんにご協力いただき、2012年7月21日に浜松で行われたネイチャーゲームとのコラボレーションプログラムの様子をご紹介します。
自己を自由に表現する シュタイナーの技法で広がる自然体験のメッセージ

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としくらえみ

東京生まれ。幼稚園勤務ののち、1987年から数回にわたりドイツやスイスに渡り、シュタイナー幼稚園での実習を行うほか、水彩画や芸術療法(アートセラピー)を学ぶ。現在、京都にてぬらし絵やクラフトを教えるアトリエ・キンダー・ライムを主宰。2児の母。

※本記事は情報誌「ネイチャーゲームの森 vol.79」(2012年9月15日発行)より転載しています。団体名称、役職者名等について発行時の表記となっている場合があります。

ドイツの哲学者ルドルフ・シュタイナーが提唱した『シュタイナー教育』は、「自分で感じ・考え・行動できる人を育てる教育」として、日本でも幼児教育を中心に根強い支持を受け、静かに広まってきています。近年ではシュタイナーの教育理論を取り入れた幼稚園や小学校もあり、多様な書籍も発行され、多くの人に知られるようになりました。

今号では、そのシュタイナー教育の実践者・としくらえみさんにご協力いただき、7月21日に浜松で行われたネイチャーゲームとのコラボレーションプログラムの様子をご紹介します。

自然体験で感じたことを自由に「ぬらし絵」で表現!

全体がしっとりとなるまでぬらした画用紙に、平筆で水彩絵の具を置くと、みるみるにじんでふわーっと色が広がっていきます。そこにまた別の色を置くと、絵の具と絵の具が混ざりあって新たな色が生まれてくる。そんな様子に子どもたちは夢中になり、次つぎに思い思いの色を画用紙にのせていきます。直線、曲線、そして大小さまざまな水玉模様...。用いる色は、赤・黄・青の三原色のみです。しかし画用紙の上には、それらの色が出会って無限の色が広がっていきます。

体験や思いを絵に描いて表現しようと思っても、輪郭で描く線画では、小さな子どもには難しくなかなか思うように描けないこともあります。でも『ぬらし絵』ならば、イメージすればどんどん絵が生まれてきてくれる。もちろんイメージしたものと違う色が出てしまうこともあります。でもそこからまた新たなイメージが生まれる。ですから小さな子でも絵が苦手な子でも、誰もが楽しめ、自分を表現できるんです


そう話すのは、今回シュタイナーの代表的なアクティビティ『ぬらし絵』の指導をしてくださったとしくらえみさん。

参加者は、3歳から小学5年生まで16名。それらの子どもたちが、ひとりで、またグループで、年齢に関係なく夢中で画用紙に向かっていました。参加者のなかには「普段落ち着きのある子ではないのに、集中して真剣に絵を描いていたのにびっくり」とお母さんを驚かせた子もいました。

そしてできあがった絵を見ると、ぬらし絵を行う前に見た自然の風景をイメージさせる絵がたくさん!

この日のプログラムは、最初に屋外でネイチャーゲームのアクティビティ〈フィールドビンゴ〉(*1)と〈カメラゲーム〉(*2)を行い、その後室内に移動して、としくらさんの指導で『ぬらし絵』を行うというもの。そのため子どもたちの頭のなかには、会場となった佐さ鳴なる湖こ(静岡県浜松市)の自然が鮮明に焼きついていたのでしょう。湖を思わせるブルー、湖畔の緑、咲いていた花々の表情がイキイキと表れていました。まだ言葉では体験をしっかりと伝えられない小さな子どもたちが、このように自然を見ていたのか・・・と、まるで子どもたちの心が画用紙の上に飛び出てきたようでした。

ネイチャーゲームとのコラボレーションは初めてですが、やはり自然をイキイキと感じてきているので、色がおもしろいですね。ネイチャーゲームもシュタイナーの『ぬらし絵』も、遊びなんだけど、結果として豊かな体験が子どものなかに入ってくる。そして最終的に技術や知識につながるように考えられている。多くの共通点があると思いました。今後もっといろいろなことができるような気がします(としくら談)


青と黄色を混ぜたら緑になるということを知っている子はたくさんいます。でも色の混ざり方によって同じ緑でもさまざまな色があることを、知識だけでなく体験として知っていること、「感覚で知ることが大切」なのだと話すとしくらさん。だからシュタイナーのプログラムはできあがりではなく、過程が大切だといいます。ネイチャーゲームの理念と、どこか重なるものを感じます。

*1 フィールドビンゴ:カードに書かれた「いい匂い」「星のかたち」などを、五感を使って自然のなかから探し出すアクティビティ。
*2 カメラゲーム:体験者自身がカメラになり、目をつむったまま案内された場所で、カメラのファインダーを開くように一瞬目を開き、自然の風景を頭に焼き付けるアクティビティ。

シュタイナー教育の理念はネイチャーゲームに近い!?

この日のプログラムには、ネイチャーゲームのリーダーやインストラクターが数名視察に来ていました。プログラムを見学したリーダーの1人、長野の公立保育園園長、原礼子さんは

自然のなかで心が柔らかくなったあとで心のままに創造し、できたものを『素敵だね』といってもらえるのがいいですね。自己肯定感を育てるプログラムとして効果があると思います

といいます。また、インストラクターの早川広美さんは

言葉ではないシェアリングの方法として、とてもおもしろいと思いました。今後ぜひプログラムに取り入れて、子どもだけではなく大人にもやってみたいですね。きっとストレス解消にもなると思います

と、まずは自分自身がやってみたいと、意欲満々で帰って行きました。

今回のイベントを企画したのは、遠州ネイチャーゲームの会にも所属する山本真樹さんです。じつはドイツ玩具の輸入販売の仕事をしており、シュタイナー教育には昔から造詣が深いリーダー。

 

自分で感じ・考え・行動できる人を育てるシュタイナー教育には、ネイチャーゲームの理念との深い共通点を感じています。
シュタイナー教育では、自然の流れに逆らわず、発達の段階に合わせ、その子らしく生きることを大切にします。地・水・火・風を感じて暮らす環境を理想とし、"地"を物質、"水"を生命やリズム、"火"は人のなかにある内なる思いや熱意、そして"風"を人間関係と置き換えて考えることもあります。この発想に私は大きな影響を受けているんです。ただ、現在の日本ではシュタイナーのベースとなる直接的な自然体験が不足している人が多いと感じています。そこでネイチャーゲームとのコラボプログラムをはじめました



すでに保育園、幼稚園、音楽や絵画、料理教室など、幅広い分野でネイチャーゲームの年間指導を行っている山本さんは、今後はシュタイナー教育とネイチャーゲームを合わせた指導者育成なども行いたいといいます。どのような広がりを見せるか、とても楽しみな取り組みのひとつです。


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取材・文/伊東久枝
取材協力/としくらえみ/山本真樹/原 礼子/早川広美
写真提供/日本協会
構  成/編集部



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