このような根源的な問いに対して、白梅学園大学特任教授の朝岡幸彦先生による、 子ども環境学をベースに、子どもと自然との関係性を問い直すコラムがスタート!!
今回はその土台となる、子ども学とは何かについて教えていただきます。

「子ども学」という研究領域があることを、みなさんはご存知でしょうか。少し古いデータですが、2009年には学部・学科に「子ども(こども)」を冠した大学・短大は 88校あったそうです。(新田司「子ども学」の変遷と課題『千葉敬愛短期大学紀要』第31号、2009年)。私が在籍している白梅学園大学子ども学部は 2005年度につくられ、「子ども(こども)学部」としては全国で3番目となります。
さて、「子ども学」とは何でしょうか。2003年に発足した「日本子ども学会」は、その方針として「自然科学、人文科学、社会科学の研究者、および教育・文化・福祉の実践 者が、『子ども』というキーワードのもとに、各々の専門分野の成果を持ち寄り、学際的に自由な交流を行うとともに、環学的に新しい領域を掘り起こしながら、子どもの全体像を捉え直す」と述べています。
また、白梅学園大学には「子ども学研究所」があり、「建学の理念 『ヒューマニズムの精神』に基づき、子どもを取り巻く保育・教育・心理・福祉を始めとした諸問題に対して多 角的な調査研究及び実践を行い、そ の成果を広く社会に示すとともに、地域社会への知的還元と支援、生涯 学習を多様に展開して公共の利益に 貢献すること」を目的としています。
どうやら「子ども」をキーワードにして、子どもを取り巻く諸問題を 学際的に調査・研究する新たな学問領域を「子ども学」と呼んでいるようです。しかし、ここには「子ども」をどのように定義するのかという、ややこしい議論が含まれてきます。 例えば、「こども基本法」第2条には「この法律において『こども』とは、心身の発達の過程にある者をいう」と規定されており、年齢によって区切られてはいません。
ただし、その2項1では「こども 施策」として、「新生児期、乳幼児期、学童期及び思春期の各段階を経て、おとなになるまでの心身の発達の過 程を通じて切れ目なく行われるこど もの健やかな成長に対する支援」と 規定されているので、「こども」には新生児期、乳幼児期、学齢期、思春期の4つの段階があって「おとなになるまで」の期間を指すことが分かります。
さて、白梅学園大学子ども学部に、2027年 4月から新しい「子ども学科」が設置されます。当初は*D GX(デジタル・グリーン・トランスフォーメーション)をキーワードに冠した「デジタル・グリーン子ども学科」という名前も検討されていたのですが、保育・幼児教育を中心とした現在の「子ども学科」に社会福祉系の学科を統合した、新「子ども学科」にしようという形で落ち着いたのです。
新学科のカリキュラムには下記のような子どもと環境に関わるさまざまな授業を開講予定です。一部の科目は今年から前倒しで開講されており、「自然体験活動実習」は日本シェアリングネイチャー協会の藤田さんに講師をお願いしています。
みなさん、こんな授業が大学にあったらいかがでしょうか。これらの授業の名称だけでも、少なくとも 乳幼児期、学齢期の子どもたちが自然と豊かに関わり、自然を好きに なってもらえるような保育・幼児教 育、学校教育の指導者(先生)を養 成しようとしていることがお分かり いただけるのではないかと思います。
* DGX(デジタルグリーントランスフォーメーション)とは
DX(デジタルトランスフォーメーション)がもたらす「人とデジタルとの新しい関係」と、GX(グリーントランスフォーメーション)が問い直す「人と自然との新しい関係」を統合的にとらえ、持続可能な社会への変革を目指す考え方です。白梅学園大学・短期大学では、デジタル技術と環境意識を両輪に人間中心の視点を超え、時代に対応する社会・教育・文化の刷新を方向づけるものとして注目しています。
『あなたの子どもには自然が足りない』という本をご存知ですか?
この本の原書、『LAST CHILD IN THE WOODS-Saving Our Children from Nature-Deficit Disorder』(R・ループ)というタイトルをあなたの子どもには自然が足りない』と翻訳したセンス (春日井晶子さん)は素晴らしいと思います。もともとのタイトルにあるように、ループが問題にするのは「自然欠損障害」です。
「自然欠損障害とは、自然から離れることで人間が支払う対価であり、 そこには感覚の収縮、注意力散漫、体や心の病気を発症する割合の高さが含まれる。…子供たちが自然と積極的に触れあうことでいかに─生命としても、認識力にも、精神性にも ─恩恵を被るかに気づくだろう。…そのような知識があれば、私たちは違う道、子供たちと自然との再会へ続く道を選べるかもしれない。」(p.53より抜粋・中略)
この自然欠損障害を「自然が足りない」と言い換えることは、文字通り、私たちの子どもを救う可能性を特別な行為ではなく、まさに親たち(その親たち)の世代が当たり前に 体験してきた自然との関わりを取り戻せばよいことを示唆しています。
では私たちは、子どもたちのため にどのような自然環境を取り戻せば よいのでしょうか。
6月には「白梅学園大学・白梅学園短期大学と公益社団法人日本シェアリングネイチャー協会との環境教育推進のための連携に関する協定」を締結して、子どものための環境教育の教育・研究を進めることで合意しています。
さて、「環境から考える新しい子ども学」をどのように構想して実践するのかを一緒に考えていきましょう。次回からは具体的なお話をしていきたいと思います。
朝岡幸彦 あさおか ゆきひこ
白梅学園大学特任教授
東京農工大学名誉教授
日本シェアリングネイチャー協会理事
1959年新潟県見附市生まれ。博士(教育学)。日本環境教育学会会長、共生社会システム学 会会長、『月刊社会教育』編集長などを歴任。 『環境から考える新しい子ども学』(萌文書林、 2025年)、『感染症と教育』(自治体硏究社、 2024年)、『動物園と水族館の教育』(学文社、 2023年)など。

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※情報誌「シェアリングネイチャーライフ」Vol.46 特集(取材・文:茂木奈穂子 編集:新名直子・藤田航平・豊国光菜子、校條真(風讃社))をウェブ用に再構成しました。
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