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小中学生の自然体験
第2回ネイチャーゲーム×子ども環境学〜子どもには自然体験が足りない(SNL48号/2026年7月号)
子どもに自然体験が必要な理由を納得感のある根拠とともに示すため、「自然・遊び・物語」の3つの結びつきを軸に解説します。初回は最新データをもとに、失われつつある自然体験の現状とその意味を考えていきます。
はじめに

第1回ネイチャーゲーム×子ども環境学〜環境から考える新しい「子ども学」の記事はこちら


「なぜ子どもに自然体験が必要なのか」と問われたとき、みなさんはどのように答えるでしょうか。

思い浮かぶ理由はさまざまでしょうが、誰もが納得できる根拠を示すことも重要です。これから数回にわたって、私なりの理由を根拠とともに説明します。話の軸として「自然―遊び―物語」の3つの結びつきが子どもの育ちに不可欠だという仮説を置きながら進めます。

今回はまず、子どもたちの自然体験が実際にどれだけ失われているのか、そしてそれが子どもの成長にどのような意味をもつのかを、最新の調査データに基づいて考えてみましょう。

環境教育に効果はあるのか

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学習指導要領の改訂に合わせて発行されてきた『環境教育指導資料』は、幼稚園・学校の教師向け指導資料として長年にわたって編纂されてきました。では、学校や地域で積み重ねられてきた環境教育には、実際に効果があるのでしょうか。

この問いに答える手がかりが、内閣府による『環境教育に関する世論調査(速報)』(令和7年9月調査)です。2024年9月から11月にかけて郵送で実施され、全国18歳以上の日本国籍を持つ3,000人を対象としたこの調査には、1,666人(回収率55.5%)が回答しました。

「環境配慮行動を実践する理由」として多く挙げられたのは、「幼少期からの生活習慣や価値観」、「自然の豊かさを感じた体験」(36.6%)、「学校での環境教育」(9.8%)でした。また、「実践に影響する要因」でも、「家庭での教育」(44.5%)、「学校での教育」(37.3%)、「自然体験」(24.4%)が続きます。

メディアの影響力は依然として大きいものの、家庭・学校・自然体験が環境への行動変容に一定の役割を果たしていることが読み取れます。

自然体験はどんどん減少している

子どもの体験活動の実態を示す資料として広く参照されるのが、独立行政法人国立青少年教育振興機構の『青少年の体験活動等に関する意識調査報告書』(以下、体験活動調査)です。令和4年度(2022年度)版は、全国の公立小・中・高校生とその保護者、約2万8千人を対象ととしており、「2010年代を通じて子どもの自然体験にやや減少傾向が見られ、コロナ禍を経た令和4年にはさらに減少した」と指摘しています。具体的には、「海や川で泳いだこと」「昆虫をつかまえたこと」「キャンプをしたこと」「高い木に登ったこと」などで「何度もある」「少しある」の割合が2022年に大きく低下しました。

さらに長期的なデータで見ると、その減少幅はいっそう鮮明です。本調査が選択肢(下表参照)を変更したために単純に比較することができないのですが、「チョウやトンボをつかまえたこと」のない子どもは、「一度もない」が4.1%(1984年)から14.8%(1995年)に増え、2022年には「ほとんどない」が31.5%になっています。また、「自分の身長より高い木に登ったこと」が「ほとんどない」子どもも49%に達しました。少なくとも40年前の親や祖父母世代の子ども時代と比べると、自然体験が激減していることは明らかです。

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また、体験活動調査では放課後・休日の過ごし方について保護者と子どもの希望を比較しており、保護者は積極的な体験活動を望む一方、子どもたちは「家でゆっくり過ごしたい・友だちと遊びたい」という傾向が見られました。

さらに体験格差と連動しているとされる世帯年収の高低にかかわらず、学校外の過ごし方への満足感が低い傾向があることも指摘されており、体験格差の問題だけでは説明できない複合的な要因が背景にあることをうかがわせます。

体験活動は子どもの意識にどう影響するのか

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同報告書では、体験活動が子どもの意識や行動に与える影響についても分析が行われています。種類を問わず、体験が豊富な子どもほど「自立性」「積極性」「協調性」の高得点群に属する割合が大きいことが、今回の調査でも改めて確認されました。

また、子どもが「やってみたい体験」と「実際にしてきた体験」の間には大きなギャップがあることも明らかになっています。「山や森・川や海など自然の中でさまざまな体験をすること」を希望する小学生は64.9%に上るのに対し、「何度もした」と答えた小学生は22.7%にとどまります。

同じく「自然の中で生き物や植物を採って食べたり加工したりすること」でも希望39.1%に対して経験7.6%と、いずれも希望が経験を大きく上回っています。子どもたちは自然体験を強く求めているにもかかわらず、その機会が十分に与えられていないのです。

さらに、階層的重回帰分析*の結果から、自然体験・社会体験・交流体験・文化芸術体験の4種の活動が、子どもの自律性・積極性・協調性のいずれとも統計的に有意な〝正の関連〟を示すことが確かめられています。自然体験が子どもの成長にプラスの効果をもたらすことは、データの面からも十分に裏付けられているといえるでしょう。

子どもたちの自然体験が意識や行動に好ましい影響を与えることは、調査によってくり返し確認されています。それにもかかわらず、自然体験の機会はコロナ禍を契機にさらに失われ、回復の兆しも見えにくい状況です。子どもたちが「したい」と思っている体験を保障するためには、家庭・学校・地域が連携し、意識的に自然との接点を設けていく必要があります。

次回は「自然体験は環境教育においてどのように位置づけられてきたのか」という問いを掘り下げます。

✳︎重回帰分析とは、知りたい結果(目的変数)に対して、影響を与えうる複数の要因(説明変数)がそれぞれどの程度関与しているかを数値化・予測する統計手法です。階層的重回帰分析は、その応用手法にあたります。


第1回ネイチャーゲーム×子ども環境学〜環境から考える新しい「子ども学」の記事はこちら


朝岡幸彦 あさおか ゆきひこ

白梅学園大学特任教授

東京農工大学名誉教授

日本シェアリングネイチャー協会理事

1959年新潟県見附市生まれ。博士(教育学)。日本環境教育学会会長、共生社会システム学会会長、『月刊社会教育』編集長などを歴任。 『環境から考える新しい子ども学』(萌文書林、 2025年)、『感染症と教育』(自治体硏究社、2024年)、『動物園と水族館の教育』(学文社、2023年)など。

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情報誌「シェアリングネイチャーライフ」Vol.46 特集(取材・文:茂木奈穂子 編集:新名直子・藤田航平・豊国光菜子、校條真(風讃社))をウェブ用に再構成しました。
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