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Vol.4 J.コーネルに大きな影響を与え続けるコミュニティ

シェアリングネイチャーを深めよう ジョセフ・コーネルが暮らすアナンダ村の魅力
Vol.4(番外編)J.コーネルに大きな影響を与え続けるコミュニティ

 サンフランシスコから内陸部に向かったネバタ山脈の麓に位置するアナンダ村は、日本協会で発行している指導員報『自然案内人』の表紙に描かれているような針葉樹林の森に包まれた自然豊かな場所です。
 敷地は、住居の他に学校や商店などもある中心地区と、そこから車で10分ほどの「セクリューション・リトリート(隠遁所)」と呼ばれる地区の2つに分かれています。
 私が最初にアナンダ村を訪ねたころは、まだ中心地に外部から訪れる人のための宿舎がなく、「セクリューション・リトリート」に住む方の家を空けていただいて、ツアー参加者数人で宿泊をしていました。
 ここはアナンダ村の中なかでもとくに静かな生活を守める人たちが過ごし、森の中に住宅と瞑想をするドームなどがあるゆったりした場所です。各家庭で印象的だったのは、物が少ないこと。本などもよく読み込まれたものが数冊ほどのことが多く、執筆活動をするコーネルさんの書斎もシンプルで、本や書類に埋もれてはいません。
 現代は都市にいても田舎に暮らしていても情報がたくさんあり、多くの人は情報を収集してそれを参考に生きています。でも本当は必要な情報は自分の内にあり、実体験のなかで自分で気づいていくものなのだといわれたような気がしました。
 「セクリューション・リトリート」の人たちは瞑想を暮らしの一部としています。私も滞在中は毎朝、ドームで瞑想にチャレンジしましたが、朝日が昇る道に窓があり、太陽が窓をゆっくり横切る瞬間は魔法のような敬けい虔けんな気持ちになる時間でした。日が昇り日が沈む、毎日当たり前に起きるそのような時間を大事にしている人たちのなかで過ごすことがとても心地よかったことを覚えています。
 コーネル氏はよく「共同体として出会った仲間がいることがどれほど幸せか。愛情を持って友情を、信頼を築き上げることほど貴重なものはない」といいますが、アナンダ村で過ごしているとそれが本当に分かるような気がします。
 日本で「コミュニティ」というと、異質な集団と警戒される傾向がありますが、アナンダ村では思いを同じにする人が集まって生活することが、ごく自然に感じられます。
 外にベットスペースのある家をお借りしたときのこと。カリカリ、カリカリ...という音で目を覚ますと、頭上の枝でリスが木の実を食べ、殻を盛んに振りまいていたことがありました。トイレはコンポストトイレで、用を足したあとは'おがくず'を撒くのですが、これがちっとも匂いもなく汚くもない。食事はすべてベジタリアン食で、村人は順番にキッチンスタッフをして、みんなで同じものを食べる。
 もしアナンダ村に住んだなら、きっと日常のなかには葛藤が生まれると思います。でも「旅人」の私にはとても心地よく、10年ほど毎年のように通いましたが、そのたびに子どものように無邪気になれ、平和な気持ちを味わえる場所でした。
 アナンダ村に行くといつも、頭のなかに「JOY」という言葉が浮かびます。この言葉が身体から湧き上がってくるような気がします。私は『シェアリングネイチャーの6原則』のなかで「深い喜びの感覚を体験しよう」という原則がいちばん好きなのですが、その原点にアナンダ村で触れたような気がします。とくに「セクリューション・リトリート」の暮らしのなかで、「自然のなかでの喜びに満ちた経験が大事」「日々の身近なところにも見方次第でその感覚は得られる」ということを学んだように思います。
 今、アナンダ村を訪れると外部からの来訪者は中心地区の新しいリトリート(日常生活から離れ、自然のなかで静かに自分を見つめなおす施設)に宿泊をします。中心地区ももちろん素敵ですが、もしアナンダ村に行かれることがありましたら、サンセットスポットとしてもお勧めの「セクリューション・リトリート」に、ぜひ足を運んでみてください。

Ananda Village アナンダ村
『Sharing Nature with Children(邦題:ネイチャーゲーム1)』他の著者であり、.日本ネイチャーゲーム協会名誉会長であるジョセフ・コーネル氏が暮らす、北カリフォルニアのスピリチュアル・コミュニティ。米国にヨガを広めたバラマハンサ・ヨガナンダの教えに基づき「シンプルな暮らしと高度な思考」を求め、1968年にスワミ・クリヤナンダによって創設された。アナンダとは「内面的な喜び」を意味する。現在、森と草原を有する800エーカー(約320ヘクタール)の敷地に、85世帯230人が暮らし、幼稚園から大学までの学校、有機農場、商店などがある。

写真はセクリューション・リトリートの森。ツアーでは〈美の小径〉や〈サンセットウォッチ〉を楽しみます。

ジョセフ・コーネル 連載休止のお知らせ
前号で、コーネル氏によるアナンダ村の生活を紹介する記事の掲載を予告いたしましたが、コーネル氏の体調不良により今号は連載をお休みさせていただきます。代わりに日本協会理事の三好直子氏にアナンダ村の思い出と魅力をご紹介いただきます。

アナンダ村HP
www.anandavillage.org
アナンダ村の様々な側面を映し出した美しいスライドショーを見ることができます。
http://www.anandavillage.org/pictorial-tour/

Naoko Miyoshi 三好直子
社団法人日本ネイチャーゲーム協会理事。1991年より10年間に渡り、アナンダ村ツアーのコーディネターを務め、毎年現地を訪ねていた。現在は理事やトレーナーとして、協会本部の運営や指導者養成講座、研修会などを担当している。

お  話 三好直子
取材・文 伊東久枝

※本記事は情報誌「ネイチャーゲームの森 vol.72」(2010年12月15日発行)より転載しています。
 団体名称、役職者名等について発行時の表記となっている場合があります。