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Vol.9 シェアリングネイチャーの5つの特徴

シェアリングネイチャーを深めよう ジョセフ・コーネルからのメッセージ
Vol.9 シェアリングネイチャーの5つの特徴

 日本ネイチャーゲーム協会の団体名が「日本シェアリングネイチャー協会」に変わることに先駆けて(9月現在、公益認定委員会審査中。9ページに関連記事あり)、私は日本の事務局より「シェアリングネイチャーの言葉の意味について説明してほしい」と頼まれました。私はこう答えました。
――「教える」のに対して「シェア(共有)する」とき、焦点は、人それぞれ自分自身の自然体験からぶれることはありません。「教える」とは、通常、自然について語ることを意味しますが、人間の言葉や定義は、自然の全体性のほんの一部しか伝えることが出来ません。

 シェアリングネイチャー(ネイチャーゲーム)の指導者は、例えば、鳥や山を観察したり、それらについて語ったりする代わりに、アクティビティを通して鳥や山の直接的で思い出深い体験を与えることが出来るのです。

 すべての指導者の目標は、人々を自然と向き合わせることにあるべきです。指導者は謙虚に、自然に関する知識を創造的に、かつ、思いやりと愛情をこめて使い、人それぞれが自然を体験し発見するサポートときっかけづくりをするべきなのです。シェアリングの姿勢こそが、私たちを自然と、そして、人とを一つにしてくれるのです。

 この記事を書くにあたり、私は自宅の庭に座り、シェアリングネイチャーのユニークな点や特徴についてあらためて考えてみました。以下は私たちのプログラムを特徴づける5つの点です。

 1 心、精神、魂に触れる自然体験を提供する。
 2 思いやり、喜び、前向きな気持ち、無私の心といった資質を育む。
 3 体験的アクティビティを通して、学びを楽しく、意味深く、想像をかきたてるものにする。
 4 フローラーニングを通して、人々の意識を惹きつけ、高めていく。
 5 自然の中での深く夢中になるような体験を通して、地球に対する愛と思いやりを育む。


 何年も昔に『ネイチャーゲーム1』を書いたとき、私は自然を助けたいと思いましたが、それ以上に、人間がより良い人間になる手助けをしたいと思っていました。『セブン・アローズ(7本の矢)』というネイティブ・アメリカンの霊的信仰について書かれた本は、人類を「決定者」と呼んでいます。なぜなら、環境に対して最も大きな影響力を持っているのは、私たちだからです。世界は今、数多くの困難な問題に直面しています。これらの問題を解決するためには、そもそもこうした問題を作り上げる原因となった、命を軽視した人間の身勝手な姿勢を変えていく必要があります。

 米国の自然保護活動家レイチェル・カーソンは、「人類は、かつてないほどに、自分たちを支配する能力―自然を、ではなく―を示す必要に迫られている」と言っています。シェアリングネイチャーのアクティビティや教え方は、子どもたちや大人たちの最も善なる気高い部分を引き出すように考案されたものです。人々が自然をより繊細に感じられるように、あらゆる命に対して愛に満ちた敬意を持てるように手助けすることこそが、人々に終生の環境倫理を育むためのカギなのです。

 2011年9月に、私はドイツの森林官たちを対象にワークショップを開催しました。ワークショップで、森林官たちは〈自然へのインタビュー〉〈木の一年〉などを楽しみました。その後、記事の取材でこの森林官の一人はこう語ったそうです。

――大学では、森林を商業的な視点から見るよう訓練を受けました。でもシェアリングネイチャーのアクティビティを体験しているうちに、私は草や木々が私の友だちであること、森の中のあらゆるものたちが私の友だちであることに気づいたのです!これは私にとってまったく新しい自然の見方であり、私のこれからの森林での仕事に影響を与えるでしょう。

 シェアリングネイチャー体験は、プログラムに参加するすべての人々の心、精神、魂に触れます。田中正造は、「河川の保護は、河川の問題ではなく、人間の心の問題である」と語っています。自然を助けるためには、人々がもっと思いやりのある人間になれるよう手助けをしなければなりません。人々の、命への、そして、お互いへの愛情を呼び覚ますことにより、私たちは、世界に有益な変化をもたらすもっとも高尚で効果的な方法を実践しているのです。

 この記事は、次回以降の情報誌に続きます。

Joseph Cornell
ジョセフ・コーネル

1950年米国カリフォルニア州生まれ。野外教育インストラクターを経て、1979年『Sharing Nature with Children』を発表。現在、世界的なナチュラリストとして活躍。米国アナンダ村で瞑想やヨガ、菜食主義を取り入れた自然と調和する日常生活を送っている。シェアリングネイチャーワールドワイド会長。(公社)日本シェアリングネイチャー協会名誉会長。

『シェアリングネイチャー 自然のよろこびをわかちあおう』発売中!

翻訳:藤牧智子

※本記事は情報誌「ネイチャーゲームの森 vol.79」(2012年9月15日発行)より転載しています。
 団体名称、役職者名等について発行時の表記となっている場合があります。